りそなHD南昌宏社長が語る「銀行の枠を超えるための組織改革」 異業種から人財を積極採用:りそなHD南昌宏社長インタビュー【後編】(2/2 ページ)
りそなホールディングスがDXを積極的に導入して銀行改革を大胆に進めている。南昌宏りそなHD社長のインタビューをもとに、りそながデジタル時代を先導してどこに向かおうとしているのかをお届けする。後編では、5年後、10年後のりそな銀行の姿を探っていく。
「りそなガレージ」
新規ビジネスを見つけ出すために、既に具体的な方策が実践されていた。本店ビルの隣にあるビルの1フロアの入り口を入ると、「Resona Garage(りそなガレージ)」という看板が掛けられている。
中期経営計画で掲げているビジネスモデル・経営基盤の次世代化に向けた取り組みを加速させるため、オープン・イノベーション共創拠点として南社長肝いりで20年の9月に創設された。
銀行の枠組みを超えた新しい価値を創造するための場で、チームラボ、日本IBM、トランスコスモスなどネット・IT業界の最先端で活躍している内外の若手社員合計約120人が勤務している。ここでは、りそなのシステムをサポートすると同時に、銀行員の頭の中にはなかった斬新なアイデアのよる新しいビジネスの芽を見つけようとしている。
「ガレージ」の内部を見学させてもらったが、服装は自由でネクタイをしている人は誰もいない。もちろんタイムレコーダーなどはない。カフェやソファも配置してあり、少人数によるホワイトボードで会議しているチームもあれば、一人で黙々とPCに向かっている人もいて、自由に仕事をしている雰囲気だった。
チームラボは猪子寿之社長率いるウルトラテクノロジー集団として有名で、多くの分野で先鋭的なソリューションを提供してきている。堅いイメージの大手銀行が、デジタル分野のフロントランナーのチームラボなどの知恵まで借りて改革を進めている姿には「目から鱗(うろこ)」だった。
「退職勧奨はしない」
中期計画では2022年3月末までに、店頭デジタル化による生産性向上によって、りそなグループの総人員を3100人(9%)減らすことを掲げている。これについて南社長は「関西みらいフィナンシャルグループ傘下の関西アーバン銀行と近畿大阪銀行が2019年4月に合併した。合併直後なので効率化を進めるために人員が減る。減少の多くは自然減によるもので、退職勧奨のようなことはしない」と述べた。
その一方で、デジタル人材などを強化するためにキャリアの中途採用は「これまでの3倍採用する。19分野の人財も含め、変化の速い時代に『時間を買う』ということだ。銀行員の専門性、多様性教育はリカレント教育も含めて拡充するが、外部で知見を持って第一線で働いている方にはできるだけ早く入ってきてもらいたい。銀行員もそうした人の周りで仕事をすることで、『そういう見方もあったのか』と気づいて変わっていく。こうした異なる価値観を持った集合体がイノベーションを起こせると思う」と、新たな人材採用の効果に期待を寄せている。
連携はウィンウィンで
地方銀行との連携については「共創のプラットフォームになりたいと思っている。銀行再編の話になると、資本を出すか、勘定系と呼ばれる大きなシステムを共同で開発するか、合併するかしかなかった。しかしテクノロジーが進化していて、自社だけでなく他社のサービスを使って商圏が広がっていく、『APIエコノミー』という形で比較的簡便で安価に取引を連携できるようになってきた。
りそなは100年以上、地域金融機関としての立場なので、同じ土俵で戦っている地方銀行の強みや弱み、悩みもよく理解している。20年に連携することになった栃木県の足利銀行と、茨城県の常陽銀行を抱えるめぶきフィナンシャルグループとはデジタル分野で、横浜銀行とは(投資先ファンドの選定など資産運用に関するサービスを総合的に提供する)ファンドラップの運用のところで協力することになった。現在24の連携タイプを用意しているが、お互いにハードルを低くしてウィンウィンの関係で連携を進めていきたい」と指摘、連携には前向きだ。
南社長はこの連携の先を見据えている。「APIでつながっているということは、りそながネットワークを持っていない、めぶきフィナンシャルグループ傘下の栃木県、茨城県のお客さまと間接的ながら関係を持つことができ、栃木、茨城県のお客さまともウィンウィンになれる。デジタル化が進むとネットワーク系が重要になり、双方向でどれだけ多くの数、面積を持っているかが、入ってくる異業種から見ても大きな意味がある」とみている。
つまり、フェース・トゥ・フェースだけではないネットワークの先に顔が見えなくても顧客を抱えていれば、それだけ増幅効果が期待できるというわけだ。
70歳まで働く場を用意
この4月に高年齢者雇用安定法が改正施行されて、企業は希望者に対しては70歳まで働ける場所を用意する努力をしなければならなくなった。この対応について南社長は力説した。
「19年10月に『マスター社員・パートナー社員』制度の改定を行い、希望すれば70歳まで働けるようにしています。今年の4月には60歳から65歳までの間で自由に定年を設定できるようにし、その後はシニアスマート社員として再雇用される新しい制度を作っている。
どんなにテクノロジーが進化しても全ては人が起点になるので、いままで培ったノウハウや知見を持っている人は、それぞれの分野で形は変わっても活躍する場を作るのが重要になる。日本全体が高齢化社会を迎える中で、われわれが求められるのは働ける選択肢の提供だ。単純なジョブ制などではなく、年齢にとらわれず才能を開花させることが必要だ。このため、リカレント教育というものが非常に大事になってきている。りそなでは人材の材の字を財に変えて『人財サービス部』を作っている」
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