「スシロー」には1台250万円の寿司ロボットも! 回転寿司チェーン支えるメーカーの知られざる実力:飲食店を科学する(2/4 ページ)
コロナ禍でも大手回転寿司チェーンの業績は堅調。躍進を支えているのが「寿司ロボット」。ロボットを開発・販売する「鈴茂器工」の知られざる実力は?
なぜ寿司ロボットを開発したのか
鈴茂器工は1961年に創業しました。当初は寿司ロボット製造ではなく、アイスキャンディーの凝固剤や最中のあんこの充填機など、菓子類の量産化支援を中心に事業拡大を行ってきました。しかし70年代に入ると同社の未来を変えるきっかけとなった出来事が起こりました。それは政府による米の「減反政策」です。
技術革新などで米の生産量が増える一方、日本人の食文化が洋風化。「米離れ」が進み、米が供給過剰となっていきました。そこで政府は、生産調整を行うようになります。
同社の創業者である鈴木喜作氏は「高級な寿司を身近なものにできれば、もっと米の消費が拡大するはずだ」と考え、当時は誰もが不可能だと思っていた寿司ロボットの開発に着手します。
ロボット化する上で最もネックになるのは、何と言っても「シャリ」の食感です。寿司職人は長年の修行により「手でつまんでも崩れず、口の中にいれた瞬間にほぐれる」シャリを握ることができます。鈴木氏はこの食感を再現するため、寿司職人の動きを徹底的に研究しました。
5年の研究開発を経て、81年に世界初となる寿司ロボットの開発に成功したのです。開発当時は全国の寿司職人から激しい批判を受けました。しかし、80年代はちょうど回転寿司チェーンが次々と全国展開を行っていた時期であり、同社の寿司ロボットも市場の成長と共に販売台数を大きく伸ばしていきました。
同社が開発した寿司ロボットが普及するにつれて、それまで高級料理であった寿司の大衆化が進んでいきます。
91年には「海苔巻きロボット」の開発にも成功。海苔の上にシャリを平らに敷く職人の技術を再現し、スーパーの総菜売り場などに普及していきました。
85年、同社の寿司ロボットはアメリカの製品安全規格である「UL規格」を取得し、海外への輸出も可能にします。職人がいなくても寿司を提供できるロボットは、海外でのニーズも非常に高かったのです。同社は海外販売戦略に力を入れており、現在では米国やシンガポールの拠点を中心に、世界20カ国以上に販売代理店を広げています。
では、世界的な経済危機を招いたコロナ禍の中で、なぜ前年を大きく上回る収益を上げることができたのでしょうか?
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