文具市場は縮小しているのに、サクラクレパスの業績が好調の秘密:週末に「へえ」な話(2/3 ページ)
文具市場が苦戦している。矢野経済研究所のデータによると、縮小傾向が続いているが、子ども向けの商品を扱う「サクラクレパス」の業績が好調なのだ。その背景に、何があるのかというと……。
8年連続で過去最高
ただ、ちょっと気になることがある。リサーチ事業などを手掛けるアイブリッジが行った調査によると、普段使用している文具に興味やこだわりがあるのは、若い人ほど多いことが明らかに。子どもの数が減っていることを考えると、文具業界に「逆風」が吹き荒れているのではないだろうか。
矢野経済研究所のデータを見ると、やはり右肩下がり。2016年度の市場は4692億円に対し、20年度は4064億円(予測)。クレヨンやクーピーなど子ども用をメインに扱っているサクラクレパスも、じわじわダメージを受けているのではないか。今年100歳を迎えたけれど、このままだと108歳を祝う茶寿(ちゃじゅ)は難し……と邪推していたが、見事に違っていたのだ。
20年度の売り上げは386億円で、8年連続で過去最高を更新。「少子化+子ども向け商品=ダメだこりゃ」といった公式を想像していたものの、海外事業が会社の業績を引っ張っていたのだ。売上高の海外比率をみると、12年は27%だったが、20年度は41%まで高まっている。
ところで、海外の売り上げは、なぜ伸びているのだろうか。同社が海外展開を始めたのは、1930年のこと。世界恐慌が日本にも波及し不況が深刻化していたり、サッカーのワールドカップ第1回大会(ウルグアイ)が開かれたり、銀座に三越がオープンしたり。創業してからわずか9年目にもかかわらず、海外展開を始めていたのだ。
当初、アジア諸国に、商品を販売していたわけだが、担当していたのは「営業部」でもなく「海外事業部」でもない。「美術部」だったのだ。ネーミングからして“学校の部活動”のようなイメージがあるが、学園祭のノリのような感じで仕事をしていたわけではない。現在、海外事業を担当している菅原健一常務取締役に聞いたところ、「“商品をつくって、売れたら終わり”ではなく、絵を描くことの楽しさなどを伝えていくことにチカラを入れていました。こうした背景があったので、部署名は『美術部』としていました」
その後、1956年に米国、その2年後に欧州に進出する。「海外に進出する際、日本で展開しているブランドをそのまま使っても、現地の人たちにはなかなか伝わりません。ということもあって、パッケージのデザインや商品名などは変えています」(菅原さん)とのこと。
例えば、水彩絵の具には「Koi(コイ)」という名称を付けている(日本では「プチカラー」として販売)。パッケージにカラフルなコイ(鯉)を描くことで、日本的なイメージを表現しているという。このほかにも、日本で販売しているボールサインは「ジェリーロール」に、水性顔料サインペンは「ピグマ」といった名称で、それぞれ販売している。
関連記事
- キユーピーの「ゆでたまご」が、なぜ“倍々ゲーム”のように売れているのか
キユーピーが販売している「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」が売れている。食べことも、見たことも、聞いたこともない人が多いかもしれないが、データを見る限り、消費者から人気を集めているのだ。なぜ売れているのかというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - すぐに完売! 1枚焼きの「ホットサンドソロ」は、どうやって開発したのか
食パン1枚でつくるホットサンドメーカーが売れている。その名は「ホットサンドソロ」。新潟県にある「燕三条キッチン研究所」が開発したアイテムだが、どのようにしてつくったのか。担当者に話を聞いたところ……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.