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100年近くレシピの変わらない「崎陽軒のシウマイ」が今も売れ続ける理由崎陽軒・野並社長、経営を語る【後編】(4/4 ページ)

経営者にとって必要な素質、それは「何を変え、何を変えないか」を見極める力である。崎陽軒の野並直文社長は身をもってこの重大さを学んだ。

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“坊主頭”は伝統とはいえない

 この「崎陽軒イズム」を次代に継承していくことが、今後の野並社長の役目だろう。これに関して、「伝統を守ることについては、消極的な解釈と積極的な解釈の2つがある」と、野並社長は独自の見解を示す。

 消極的な解釈とは、先人と同じことをやって、その後ろをなぞっていくこと。一方、積極的な解釈とは、先人と同じものを目指すことだという。

 「例えば、高校野球の名門といわれる伝統校は、先輩が甲子園を目指して頑張っていたから、俺たちも甲子園を目指すのだという共通意識があります。片や、先輩が坊主頭にしていたから、俺たちも坊主にしようというのは、伝統の継承とはいえません」


親交のある總持寺の住職から贈られた言葉。「白雲自去来」とは禅の教えで、今やるべきことに一生懸命取り組めば、必ず運は巡ってくるものという意味

 野並社長は続ける。

 「崎陽軒に置き換えると、先輩がシウマイ弁当を作ってくれたから、それを後生大事に売っていればいいという考えではいけません。先輩が『横浜の名物がないなら作ってしまおう』とシウマイを世に出したように、われわれもシウマイだけでなく、新しい名物を作っていこうと考えるべきです。これが積極的な意味での伝統の継承です」

 守るべきものは守り、変えるべきものは大胆に変えていく。ただし、そのいずれにおいても、ひと様に後ろ指をさされることはないよう、常に良心的な仕事をまっとうすべきである。崎陽軒に根付くこの経営哲学が、これから先も受け継がれていくとともに、多くの日本企業にも広がっていくことを願う。

著者プロフィール

伏見学(ふしみ まなぶ)

フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。


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