三菱UFJ信託が情報銀行事業開始 Dprimeで「お金の代わりに個人情報を預かる」(2/2 ページ)
三菱UFJ信託銀行は7月1日、情報銀行サービス「Dprime」を開始した。個人から、本人情報や趣味嗜好、位置情報を使った行動履歴、資産情報などを預かり、本人の同意の下で企業に提供する。企業はデータをマーケティングに活用するとともに、提供したユーザーに割引券などを提供する。
「お金の代わりに個人情報を預かる」
なぜ銀行である三菱UFJ信託が、このように企業のマーケティングを支援するサービスを行うのだろうか。「銀行のお金をデータに置き換えると理解しやすい。お金の代わりに銀行にデータを預ける。貸し出しの代わりに企業に提供する。金利の代わりに対価が企業から提供される」と、Dprimeを担当するデジタル企画室長の田中利宏氏は説明する。
長島社長は「個人のデータもお金と同じような価値がある。自分で個人のデータを企業に使わせていいか判断する時代がくる。そのときに、信頼できる人に管理してもらうことが重要だ」と、個人データの管理と信託銀行の相性の良さを述べた。
Dprimeのアンバサダーに就任した元サッカー選手の中田英寿氏は、「世の中がデータドリブンに変わっていく中で、データがないというのはそれだけで失敗する可能性が高い。誰が買っていてどこで買っているのかも分からない。前年の実績に基づいて生産するのは、ある意味賭けだ。データによって、より効果的な活動ができるようになっていく」と、中小企業にとってもデータの重要性が高まっていると述べた
スタート時点で参加する企業は三菱UFJ銀行と取引のある、B2C事業を行っている企業などから選んだ26社。すでに40〜50社が参加を決めており、近い将来数百社まで拡大を目指す。アプリは現在iOS版のみだがAndroid版の提供も予定しており、「2〜3年後には最低でも100万ダウンロード」(田中氏)とマス顧客への訴求を狙う。
昨今、個人データの取り扱いは世界中で課題となっている。データ活用と企業のビジネスは切っても切り離せない時代になってきているが、特に巨大IT企業がユーザーの個人データを収集分析し、広告などに使って収益を上げていることへの批判も多い。一方で、収集分析は高度化しており、中小企業にとってはデータの利活用はコスト的にも技術的にも簡単ではない。
Dprimeは、個人データを厳格に管理しつつ、個人が自分自身のデータをコントロールできるようにする。そして企業との間に入ることで、中小企業にも「質の高いデータを使いながら効率的なマーケティングが可能になる」(長島氏)。
情報銀行は果たして日本に根付くかどうか。長島氏は課題を次のように挙げた。「個人データの管理を、みんなが真剣に重要だと思うかどうか。利用規約の同意ボタンがあれば、簡単に押してしまうなど、こだわらない人もいる。誰もこだわらなければ、ここまで厳格な管理をしてもニーズがないだろう」
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