市場は7割減! “スーツ離れ”を断ち切ることはできるのか:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
スーツ市場が苦戦している。ピーク時(1992年)に比べて、販売数が7割ほど減少しているが、どうすれば回復することができるのか。筆者の窪田氏は……。
スーツを無償支給に
それがうかがえるのが、矢野経済研究所による日本のユニフォーム市場規模の推計だ。日本は人口減少によって労働人口も減少している。にかかわらず、制服ビジネスは堅調で、19年度は前年度比0.7%増の5292億円となっている。もしここに「オフィスワーカーのユニフォーム」も組み込まれていけば、スーツ業界も息を吹き返すことは間違いない。
例えば、トヨタ自動車のような影響力のある企業や、経団連企業などが音頭をとってスーツの制服化を推進していけば、採用活動やホワイト企業アピールの目的で導入していく企業も増えるだろう。テレワークなどで自由な服装で働く人たちが増えていく一方で、会社から支給される「制服スーツ」も多様性の一つとして後世に受け継がれていくはずだ。
服飾文化というのは、個人の嗜好(しこう)に任せたままでは着物や和装のように衰退してしまう。セーラー服が100年経った現在も文化として残っているのは、「かわいい」からではなく「制服」だからだ。これと同じく、スーツも制服化することによって、100年先まで文化として受け継いでいくことができるはずだ。
というような話を聞くと、「待て待て、いくらスーツ文化を守るためとはいえ、なぜ日本中の会社が金を負担しなくちゃいけないんだよ」と文句を言いたくなる方も多いかもしれないが、実は「スーツの制服化」は日本社会全体にとっても悪いことではない。
まず、大きいのは労働者の「賃上げ」に寄与できる。
前回の「安いニッポン」でも触れたように、日本の労働者は他の先進国の労働者よりも、かなり低い賃金で働かされていることが徐々に問題になってきている(参照リンク)。さりとて、年功序列や、定年退職を控えるベテランの手前、気軽に給料をあげていくこともできない。
そこでスーツの無償支給だ。手頃な価格のスーツといえども、3万円くらいはしてしまう。毎日着るワイシャツも含めたらかなりの出費だ。それをもし会社が負担をしてくれることになれば、給料から余計な出費をしないで済む。つまり、実質的な「賃上げ」をしていることと変わらないのだ。
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