市場は7割減! “スーツ離れ”を断ち切ることはできるのか:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
スーツ市場が苦戦している。ピーク時(1992年)に比べて、販売数が7割ほど減少しているが、どうすれば回復することができるのか。筆者の窪田氏は……。
制服ビジネスの未来は明るい
このように日本のサラリーマンの服飾文化は、国民服という「制服」から始まっている。だから本来は「制服化」に違和感があるはずがない。むしろ、原点に戻ったような気がしてホッとするはずなのだ。
実は国民服は当初、20%くらいしか着用されなかった。戦時中でもおしゃれを楽しみたい、個性がないのがカッコ悪いということだった。しかし、戦局が悪化して、空襲が激しくなっていくことで一気に浸透して、最終的に日本の男性のほとんどはこの国民服を身にまとった。
つまり、われわれ日本人は苦しくなれば苦しくなるほど、「一体感」を求める集団心理が働いて、「制服」にすがってしまうのだ。
人口減少と低賃金の固定化で、これからの日本は貧しい若者から犠牲にしていく「消耗戦」へと突入していく。過去の歴史に学べば、さまざまな業界、さまざまな会社でこれから「一致団結」のためにユニフォームの導入が増えていくということだ。
日本は多様性だなんだと言いながらも、いまだに「貧しい家庭の子どもがいじめにあわないように制服を守れ」なんて声が多くて、子どもたちに制服も強制している。アイドルグループも制服のような衣装を身にまとう「制服大国」と言ってもいい。
そのような意味では、制服ビジネスの未来は明るいのだ。なにかとつけて「一体感」を求めるムードが高まって、学校、友人同士、会社、そしてスポーツやエンタメなどでユニフォーム需要が増えていくに違いない。
戦争を知る世代も徐々に消えていく中で、気がついたら「今、国民服がおしゃれ」なんてことになる日もそう遠くないのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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