スタートアップ企業と組込型金融に注力 第二創業うたうGMOあおぞら銀の新戦略(2/2 ページ)
創業から4年目を迎えたGMOあおぞらネット銀行が、第二の創業を打ち出した。7月6日に行った事業戦略発表会では、従来の戦略を転換し、起業直後のスモール&スタートアップ企業へのフォーカスと、組込型金融に注力することを掲げた。
組込型金融サービスの強化
もう一つの注力領域が、組込型金融サービスだ。これはエンベデッドファイナンスやプラグイン金融とも呼ばれ、銀行の機能をパーツに分けて他社に提供するサービスを指す。
GMOあおぞらネット銀行は、金融庁が旗を振って進めてきた銀行APIのトップランナーだ。ほとんどの銀行がAPIを実装したものの、利用に制約があったり費用が発生したりする銀行もあるなか、同社は無料で提供するだけでなく開発を自由に試せる環境も提供(記事参照)。広くAPI活用を促し、APIの契約先はすでに137社にのぼる。
銀行APIを無料で開放し利用企業は増加。「APIの収益化は強くは考えていない。APIは接続するツールであり、接続企業の負担にもなる。接続企業のビジネスが発展することでわれわれに返ってくる」(金子氏)と考え方を話した
さらに銀行サービスを実現したい企業に向けて、ホワイトレーベルで銀行機能を提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)事業も拡大する。昨今、住信SBIネット銀行やみんなの銀行など各社がBaaS事業に力を入れている。自社で多くの顧客を持つプラットフォーマーが、BaaS機能を使って自社ブランドで銀行サービスを提供することをネオバンクと呼ぶが、GMOあおぞらネット銀行もこの領域に力を入れる。
こうしたフルパッケージの銀行機能の提供だけでなく、パーツ単位で銀行機能を提供するのが、組込型金融サービスだ。「BaaS型のサービスを提供しているが、こにプラスする形でかんたん組込型金融サービスを提供したい。銀行パーツでDXを加速させたい」と金子岳人会長は話した。
イメージとしては、給与前払いサービスのアプリ内でボタンを押すと、指定した銀行口座にお金が振り込まれる。こんなことを実現するためのパーツの提供を進める。
組込型金融サービスの促進のため、銀行パーツのマーケットプレイスも「ichibar」という名称で8月下旬にスタートする。銀行機能を利用した金融機能のパーツを参加者が自由に開発し、それを購入して組み込んだサービスを開発できるというイメージだ。
「テックファーストな銀行」を掲げるGMOあおぞらネット銀行。「銀行のネット化ではなく、ネット企業による銀行サービスだ」(山根氏)とし、銀行のカルチャーにとらわれないネット企業らしさを打ち出していく。
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