【決算】マネフォ、ARR97億円、40%増 次の成長に向けた2つの取り組み
マネーフォワードは7月15日、2021年11月期の上期に当たる20年12月-21年5月期決算を発表した。SaaSビジネスの定常的な収益であるARRは、97億円に到達し前年同期比で40%の伸びを見せた。伸びを牽引したのは、同社が集中投資領域と位置づける法人向けバックオフィスSaaSサービスだ。50%の伸びを見せ、63億4200万円となった。
マネーフォワードは7月15日、2021年11月期の上期に当たる20年12月-21年5月期決算を発表した。売上高は74億6000万円(対前年43.1%増)、営業利益は上期で4400万円の黒字となった(第1四半期は8000万円の黒字、第2四半期は3600万円の赤字)。
【訂正:7/16 13:10 第1四半期および上期が黒字、第2四半期は赤字でした。お詫びし訂正いたします。】
SaaSビジネスの定常的な収益であるARR(Annual Recurring Revenue)は、97億円に到達し前年同期比で40%の伸びを見せた。伸びをけん引したのは、同社が集中投資領域と位置付ける法人向けバックオフィスSaaSサービスだ。50%の伸びを見せ、63億4200万円となった。
クラウド会計を中心とした法人向けバックオフィスSaaSは、21年3-5月期に獲得した課金顧客数が、法人で1.9倍、個人事業主が3.1倍となり、増加ペースが加速した。20年に、個人向けの家計簿サービス、マネーフォワードMEに確定申告支援機能を搭載し、そこから会計サービスへの送客が効果を発揮した。
マネーフォワードMEのパートナー戦略が進行
マネーフォワードの創業事業でありながら、事業としての投資優先度が下がっていた個人向け家計簿サービスのマネーフォワードMEだが、この四半期は新たな動きが見られた。1200万人を超えるユーザーが登録した、総額15兆円にのぼる個人資産の情報を活用し、ユーザーの課題を把握、パートナーとの協業によって課題を解決していくというものだ。
新電力のシン・エナジーの電気プランを提供する「電気料金の見直し」、ライフネット生命の保険を提供する「生命保険の見直し」の提供を開始。ロボアドサービスを運営するSUSTENと資本業務提携し、ユーザーの資産状況に合わせて資産運用サービスを提供する機能を共同開発する。さらに、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォームを運営するツクルバと提携し、住み替え支援サービスも22年に提供する予定だ。
こうしたパートナー協業により、従来6000億円としてきたホーム領域のTAM(潜在的な市場規模)を、8000億円に上方修正した。
課金サービス利用者は32万人(対前年29%増)となり、バックオフィスSaaSと比較すると成長率は低いものの、新たな事業領域の足がかりをつかんだ形だ。
「サービスの作り込みが重要なので、パートナーとはしっかり提携しているが、独占的な形ではなく、さまざまなパートナーに提携を広げていきたい」と辻庸介社長は話した。
三菱UFJ銀行とのジョイントベンチャー
もう1つの注目は、中小企業向けオンラインファクタリングサービスの提供に向け、三菱UFJ銀行(MUFG)と合弁会社を設立する点だ。この夏に設立し、サービスは22年春の提供を予定している。
ファクタリングとは、売掛債権、つまりいわゆる請求書を合弁会社が買い取るサービスだ。これにより中小企業は売掛債権を早期に現金化でき、資金繰りを改善できる。オンラインで提供することにより、審査プロセスの自動化や、審査時間の短縮化、非対面での利用を実現する。
辻社長は、「ファクタリングは伸ばせば伸ばすほど運転資金が必要になる。当社単体ではアクセルを踏みづらかったが、MUFGの財務基盤を活用することで安定した事業が行える。MUFGの名前で出した方が知名度、信用力が大きい。MUFGの顧客基盤にも提供する。より広いユーザーに申し込んでもらえることを期待している」と話した。
全社の戦略としては、中長期的なキャッシュフローの最大化を重視する方針を堅持しており、黒字化については営業利益ではなく通期でのEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前、その他償却前利益)の黒字化をコミットしている。ただし、上期で営業黒字となったことで、追加借入も容易となった模様だ。
インドネシアでバックオフィスSaaSを提供するメカリグループへの出資などもあり、前四半期から手持ち資金は10億円ほど減少した。「ネットキャッシュは20億くらいだが、長期の借入が多い。上期黒字化していることもあり、追加の借入もし、流動性については問題ない」(金坂直哉CFO)
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