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コマツ小川啓之社長に聞く海外戦略 スマートコンストラクションを武器にさらなる市場を開拓コマツ小川啓之社長の野望【後編】(2/4 ページ)

コマツの売り上げの約9割は海外。建設機械車両の世界の生産拠点は81カ所、販売拠点数は58カ所にわたる日本を代表するグローバル企業だ。小川啓之社長インタビューの後編では、同社の海外戦略について聞く。

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石炭の生産量 5年後の見通しは?

――世界の気候変動から二酸化炭素を多く排出する石炭への風当たりが強まっています。これにより石炭産出が減少すれば、コマツの営業戦略にもマイナスになる恐れがあるのではないですか。

 コマツ全体の年間売り上げ約2兆5000億円に占める石炭顧客へ向けた割合は約11%で、燃料炭が約7%、原料炭が約4%の割合です。新興国では燃料炭は重要なエネルギー源で、資源エネルギー国にとって石炭は依然として重要なビジネスです。従って脱炭素の動きはあるものの、この5年間というスパンではグローバルでみれば、生産量が半分にまで大きく落ち込むことはないと見込んでいます。ただ、ほかの資源にシフトしていくだろうとは考えています。

――米国の動きをどう見ていますか?

 例えば、北米では石炭生産量の85〜90%を自国で消費しており、輸出はしていません。バイデン政権がエネルギー転換を求めるグリーン政策を取ったことで、北米の石炭ビジネスは衰退していくだろうと思います。コマツは17年に鉱山機械会社であるKMC(コマツマイニング)を買収しました。この会社は地下掘り事業の約75%が石炭で、そのうち約40%が北米なので、すでに石炭の減産の影響が出てきています。このため、石炭向け地下掘り事業の一部を売却するなど構造改革を進めています。

 これとは対照的に、今後は電気自動車(EV)の普及に伴い、ハードロックと呼ばれる石炭以外の鉱物向けの事業に注力していこうとしています。銅はEV用のハーネスやケーブルに使われ、ニッケルはリチウムイオン電池に使われるため、今後需要増が見込まれるためです。KMCは石炭からこうした分野に転換していく必要があり、その際にコマツの強みであるコンポーネントを活用することでKMCの建機の品質向上や商品力向上、原価低減を図ることができます。


超大型ダンプトラック930E-5(米国アリゾナ州)

――他の地域はいかがですか?

 豪州はコロナ禍の影響がなかったので20年度も好調に推移し、中国とオセアニアだけは増収となりました。資源国は、鉄、銅、石炭全ての事業が好調で、中でも銅は過去最高の価格で、21年度は鉱山向けの需要は伸びると思います。このため、仮に石炭の生産が減少しても、代わりにほかの資源の需要が増えるので、鉱山需要の先行きは期待できると確信しています。

 一方で、循環型ビジネスとして林業ビジネスにも力を入れたいと考えています。単純に伐採する機械だけでなく、土地をならす機械や苗を植えるプランターの機械にも取り組んでいます。そうすることで森林の再生を早めることができます。

 循環型ビジネスを行うことで、二酸化炭素の吸収にも寄与できるので、社会貢献につながるビジネスとして有望です。欧州には「コマツフォレスト」という会社があり、年間1000億円のビジネスを展開していますが、北米ではまだ弱い。これを強化するなどして、23年度には約1400億円のビジネスにまで引き上げたいと考え力を入れています。


KMC新本社工場建設地

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