実施人口は16年で2倍! 「筋トレ」を日本の成長戦略の柱に置くべき理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
コロナ禍でさまざまな業界で消費の低迷が見られたが、外出自粛による運動不足解消のため、「筋トレ」需要が増している。なぜ市場が拡大しているのかというと……。
経済効果に期待
そんなうまくいくかねと懐疑的な人も多いだろうが、筋トレには(2)の「少子高齢化の中で競技人口が右肩あがり」という強みがある。
ご存じのように、日本は少子高齢化がすさまじいスピードで進行している。そのため、スポーツを産業とした場合に、競技人口・実施人口の減少という頭の痛い問題に必ず直面する。子どもの数が減っている、野球やサッカーなどはその代表だが、人口が減るイメージが少ないエクササイズ系のスポーツも同様の問題があるのだ。
笹川スポーツ財団の調査では「ウォーキング」や「ジョギング・ランニング」の実施人口は02年から18年まで増加傾向にあるが、年によっては前年よりも減少している。どうしても「ブーム」に影響されるのだ。しかし、唯一、右肩あがりで増えているエクササイズがある。
そう、筋トレだ。
「推計実施人口は02年の856万人から18年には1566万人と約2倍に増加している。他の種目と違い、06年以降、実施人口が一度も減少することなく継続して増加している」(種目別にみた運動・スポーツ実施状況 その1)
このような市場の安定性に加えて、成長戦略に推すのは(3)の「ウォーキングやジョギングと異なって産業が活性化する」こともある。
ウォーキングやジョギングは、手軽さが魅力で初期費用が少なくて済む。トレーナーも必要ない。それは裏を返せば、経済効果が少ないのだ。マラソン大会などのイベントを開けばいいのだという話になるが、新たなウイルス・パンデミック時代には、五輪が巨額の大赤字を垂れ流しているように、リアル大規模イベントはリスクしかないのだ。
一方、「筋トレ」はどうかというと、まずさまざまなマシンもいるし、プロテインもいる。1人で自己流でやる人もいるが、間違った方法ではなかなか成果が出ないので、リモートでもリアルでも、トレーナーの出番が多いのだ。
また、リアルイベントにこだわる必要もない。リーボックがやっている「クロスフィット」のように、テクノロジーを介して遠く離れた人と記録やパフォーマンスを競う方法を活用すれば、パンデミック下でも普通にイベントを行える。実際、これまでもオンラインでのボディビル大会などが開催されている。
つまり、筋トレはウォーキングやジョギングなどに比べてはるかに「ビジネス」としての広がりがあり、経済効果が期待できるのだ。
関連記事
- なぜ若者はワクチン接種に消極的なのか 本当の理由と背景
やがて順番が回ってくるワクチン接種に消極的な若者が少なくない。アンケートではその理由はさまざまだが、「絶対接種したくない」という人はむしろ少数で、あいまいなものが少なくない。その本当の理由と背景をみてみると……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。 - 「安いニッポン」の本当の恐ろしさとは何か 「貧しくなること」ではない
新聞やテレビなどで「安いニッポン」に関するニュースが増えてきた。「このままでは日本は貧しくなる」といった指摘があるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしていて……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.