実施人口は16年で2倍! 「筋トレ」を日本の成長戦略の柱に置くべき理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
コロナ禍でさまざまな業界で消費の低迷が見られたが、外出自粛による運動不足解消のため、「筋トレ」需要が増している。なぜ市場が拡大しているのかというと……。
「筋トレ」の出番
このような筋トレの効果を踏まえれば、(4)の「うつ・自殺の対策になる」も納得だろう。日本人が仕事や日常で常に不安やストレスにさらされているのは、今さら説明の必要はないだろう。18年のWHOデータをもとに厚生労働省自殺対策推進室が作成した、「先進国の自殺死亡率」を見ると、男性も女性もG7の中でダントツに高くワースト1となっている。
他国では「将来への不安」などを理由に自ら命を絶ってしまう人が多い傾向があるのに対して、日本では「職場の人間関係」などを苦にする傾向がある。毎日、普通に生きているだけで不安で押しつぶされているのが、われわれ日本人なのだ。
そこで、「筋トレ」の出番だ。ご存じの方も多いかもしれないが、実は筋トレを継続すると、うつや適応障害の予防になることが、さまざまな研究によって報告されている。
良い効果は「心」だけではない。17年、シドニー大学が30歳以上の男女8万306人を対象に、トレーニングと死亡率の関係を調査したところ、週2回以上のトレーニングと週150分以上の有酸素運動によって、がんによる死亡率は31%減少し、すべての病気による死亡率は23%減少することが明らかになったという。
「筋トレ」を成長戦略にすれば、日本人が抱える「心」の問題の解決だけではなく、医療費削減効果も期待できるのだ。
また、(5)の「日本型組織の『不正体質』の改善に役立つ」ことも言うまでもない。この1年のコロナと五輪のゴタゴタを見れば明らかだが、日本型組織の失敗は、本来の「目的」を見失い、「方法論」ばかりに目を向けてしまう時に起きがちだ。
コロナ死で亡くなる人を抑える「目的」があるのなら、真っ先にやらなくてはいけないのは、先進国の水準ではあり得ないほど脆弱なコロナ医療の体制に手をつけることだが、日本医師会の政治的配慮からそこはノータッチで、焼石に水的な国民の行動抑制の呼びかけを繰り返す。
アスリートファーストで、多様性と調和を示す「目的」があるのなら、無駄な虚飾を取り払って純粋なスポーツイベントとしての体制を整えればいいのに、「国家の威信」や「支持率アップ」というスケベ心のほうが強くなって方針が迷走。とにかく予算165億円が消化できればいいと言わんばかりに、多様性のかけらもない「サブカル人脈」へイベントを丸投げするなどして、結果としてアスリートの足を引っ張っている。
このような「目的軽視」は、「筋トレ」の世界ではあり得ない。
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