「これだから若者は」じゃ進展せず オジサン社員と若者社員、心のスキマを埋めるには?:半年もたたずに辞めてしまう新人(3/3 ページ)
毎日一緒に働くからこそ、若者社員との埋められない世代間ギャップ、そして価値観の差にイライラ……なんて“オジサン社員”はいないだろうか? 「何を考えているのやら」「どうして言われたことができないんだ?」と嘆いてばかりでは心のスキマは埋められない。では一体、どうすればいいのか? オジサン社員と若者社員が成長し合える関係性を探る。
ビクついて指導できないようじゃ、上司としては落第
大企業で20年6月1日からすでに執行されている労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)は、中小企業においても22年4月1日から同様に施行されます。これにより、各企業において職場におけるパワーハラスメント防止対策を講じることが義務付けられることは、周知の通りです。
各社でパワハラ防止の啓発活動が行われる中、労働者においても〇〇ハラスメントといった形でハラスメントに対して意識が高くなっています。新入社員であっても、指導が気に入らなければ“パワハラだ”と訴えてくることも考えられます。
そんなこともあってか、中にはハラスメントと言われるのを恐れて指導すべきことを指導できていない上司がいます。たとえハラスメントと言われても、人格否定をするような場合を除き、そこにあるのはあくまでも業務指導であり、適正な範囲を超えていなければハラスメントには該当しません。
適切な指導をしないことが原因で、職場においては当然、許されないことすらも理解してもらえないとなると、結果として大きな労務トラブルに発展してしまうこともあり得ます。
「褒めて伸ばす」、成功と失敗の別れ道は?
筆者の世代は「お金を稼ぎたい」という欲求が高いと感じているのですが、いわゆる“イマドキの若者”はお金ではなく、承認欲求が高い傾向にあると言われています。だからといって、何でもかんでも褒めまくる上司がたまにいますが、その手の上司が部下の育成に成功したという事例はあまり聞いたことがありません。
実際にあった例では、早起きを習慣にしている若手社員に対して「早起きがえらい」と褒めていたのですが、それは見当違いです。社員を育成、成長させるには成長するために必要なポイントを褒めなければ意味がありません。
例えば、オフィス内の書庫が煩雑になっていたのを見て、言われる前に使いやすいように整理整頓をした社員がいたとします。この場合は、「何も言ってないのに気付いてくれてありがとう。さすがだね。みんなすごく使いやすくなったよ」といった形で主体的に整頓してくれた事実を見逃さずにしっかりと褒めてあげることが重要です。「主体的に動くことで承認されるんだ」「みんなの役に立てたんだ」と思えば、その欲求を満たすために積極的に取り組んでくれるようになるでしょう。
このように、効果的に褒めて承認し、それをしっかりと評価してあげることで、イマドキの若者社員は一皮むけ、成長できるわけです。
新入社員の見えない不安に、気付けていますか?
コロナ禍でテレワークが通常の働き方になっている現在においては、上司と部下はコミュニケーションが取りづらく、また周りの環境も見えづらくなっています。上司としては見ているつもりでも、新入社員からすれば「どうしたらいいのか分からない」「このままで大丈夫かな」など不安を抱えているケースは少なくありません。
上司がそのことに気付かないため不安が解消されず、また業務に目的を見いだしづらい新入社員は、「楽しくない仕事」といった認識を持ち、退職してしまうことも考えられます。それでは当然、会社の利益にもつながりません。
コミュニケーションについては、新入社員だけが「できていない」とやり玉に上げられがちですが、昭和世代の指導者も新入社員とのコミュニケーションは十分ではない可能性があります。
社会人経験が浅い若者は、確かに驚くような行動を起こすかもしれません。しかし一方で、その指導者であるあなた方も、やっぱり「できていない」ことを理解する――これが、新入社員とのギャップ、そして心のスキマを埋めるための第一歩と言えるでしょう。
関連記事
- 人事改革、続けて10年──日立がジョブ型移行プロジェクトに託した「思い」
ここ数年でジョブ型という言葉をよく耳にするようになった。日立製作所もジョブ型へ人事制度を転換し始めている企業の一つ。その中で、日立が特殊なのは、ジョブ型という言葉が広まるよりもずっと前から、人事制度の改革を行っていたことだ。およそ10年前に始まったというその改革の詳細とは──? - AIで採用・不採用の判断をすべきでない! HRテックCEOが警鐘を鳴らす採用DX
企業の採用活動は今後どのように変わっていくのか。その際に生じる課題とは何か。そして、AIで採用・不採用の判断をすべきでないと考える理由とは? 採用領域のHRテックに携わる2人のCEO──ZENKIGENの野澤比日樹氏とシングラーの熊谷豪氏が対談した。 - がん罹患社員に、健康な社員が積み立てた休暇を“プレゼント” ライフネット生命が「一風変わった休暇制度」を作る訳
がんなど重い病気に罹患した社員に、健康な社員たちが積み立てた休暇を“プレゼント”できる独自の社内制度を持つライフネット生命(東京都千代田区)。このほか、一風変わった休暇のメニューとは? - 都庁のDX「シン・トセイ」 脱FAX・紙・ハンコを、いかに推進したのか
「シン・トセイ」をはじめとしたデジタル化へ向けた戦略を相次いで公表し、2021年4月には、デジタルサービス局を立ち上げた東京都。デジタル化の推進や、ICT人材の採用に取り組む4人の担当者にインタビュー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.