<スキャナ保存編>知識ゼロから読める改正電帳法「一問一答」:お堅い「国税庁一問一答」を超解読!(3/3 ページ)
2022年1月1日施行が予定されている「改正電子帳簿保存法」(以下、改正電帳法)。ここからは、基本編に続き、持木健太氏(TOMAコンサルタンツグループ 取締役)協力のもと「スキャナ保存編」と題して、国税庁の公式サイト「一問一答」をかみ砕いて解説する。
問11 スキャナ保存するとき、ファイル形式に決まりはある?
実は解像度やカラー指定がある
A4を超える書類の場合は「大きさに関する情報」の保存が必要――とは問9で解説したが、それ以外にもスキャナ保存後のデータには以下のような要件がある。
解像度や256階調など、細かい指定が入っているが、カラー設定でスキャンしたデータや、スマホやデジカメで撮影したものであればいずれも問題なくクリアできる程度の内容だ。ただしスキャナーに関しては、スキャン時に意図せず設定を変えてしまう、ほかの用途で使った際に設定が変更されている可能性もあるので、事前確認をおすすめする。
<主なスキャンデータ仕様の要件>
要件 | 詳細 |
---|---|
大きさに関する情報の保存 | A4以下の書類(受領者が入力)、一般書類の場合は不要。スマホやデジカメの撮影では大きさ情報を記録することは難しいが、書類の横にメジャーを置くなどすることで代えられる(詳細は問10参照) |
解像度は200dpi以上 | スマホで撮影した画像をメール送信すると解像度が自動で変更されるケースがあるので注意したい。また、スキャナーの場合は意図して解像度を下げて読み取る設定にしている可能性もある。初回読み取り時は念のため確認を |
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調〈約1677万色〉以上) | 一般書類の場合はグレースケール(白黒のこと)でも問題ない。「256階調」とあるが、スキャナー、スマホやデジカメでは8bit(256階調)、16bit(65536階調)といったように「bit」で表現されることが多い。カラー指定でスキャンまたは撮影をして8bit以下ということはあまりない |
ファイル形式(データフォーマット)はBMP、TIFF、PDFまたはJPEG(JPG) | スマホやデジカメで撮影した画像であれば、ほとんどの場合JPEGかTIFFになる。スキャナーの場合は保存形式を選択できるが、PDF形式で保存するのが一般的 |
問12 相手から紙とPDF、同じ請求書が2つ届いた。どちらか一つ保存しておけばいいよね?
よくない。紙で受領した場合はスキャナ保存が必須
リモートワーク中、取引相手から「私も在宅なので、請求書は先にメールで送りますね。原紙はあとで総務が郵送しますから」といったやりとりをしたことはないだろうか。実はこれ、電帳法対応のことを考えるとムダな作業が発生する“要らぬ習慣”。
先にメールで受け取った請求書は「電子取引」が適用される。では「紙」で受け取った原紙は破棄してもよいかというと、実は受け取った以上はスキャナ保存の対象となる。同じ請求書であれば、メールだけの受領をおすすめする。なぜなら、スキャナ保存より電子取引の方が保存要件が緩く、スキャンといった手間も削減できるからだ。
なお、9割以上の請求書を電子取引で受領して、テレワークが困難と言われている経理部門のテレワークを実現している企業もある。一度、社内業務を棚卸して検討した方がいいだろう。
問13 スキャンした後、原紙はすぐ捨てていい?
すぐ捨てるのは微妙。「精算完了するまで保存する」など、一定のルールを
改正電帳法では、適性事務処理要件が不要になったので(詳細は問8参照) 、スキャンが済んだ原紙はすぐに捨てられるようになった。ただし、「例えば領収書などを経理に提出する人は、電帳法の細かい要件に詳しいわけではないことが多いはず。特にスマホやデジカメで撮影したデータの場合、一部が切れている、手ブレや反射で読み取れない――といったミスもあり得ます」(持木氏)。
こういった不完全なデータは保存要件を満たさないため、国税関係書類と認められない。領収書であれば「精算が完了するまで原紙は受領者が保管しておくこと」など、一定のルールは設けた方がいい。
問14 「電子計算機処理システムの開発関係書類等の備え付け」って結局、何のことですか?
操作マニュアルなどをいつでも出せるようにしておいてねということ。「紙」でもデータでも、オンライン資料でもいい
「電子計算機処理システムの開発関係書類等の備え付け」とは、スキャナ保存制度の要件の一つ。やたら小難しい言い回しだが、スキャナ保存したデータを入力(管理)するシステムのマニュアルのことだと考えればいい。
「パッケージソフトの場合は操作マニュアルがあれば問題ありません。ただし、自社開発(オンプレに限らず、クラウドシステムも含む)している場合はシステム基本設計書や仕様書も必要です」 (持木氏)。なおこれらは必ず「紙」で出力されている必要はなく、ローカルやサーバ保存、またはクラウド保存されているPDFやWebページでも問題はない。求められればすぐに出せる環境にしていることが重要となる。
問15 「検索機能」とは? スキャンデータをOCRでテキストデータ化しないといけないの?
全てをテキスト化しないでもいい。「取引年月日」「取引金額」「取引先名」の3項目をシステム上に記録すればよし
もともと「紙」だった書類をスキャンまたは撮影したデータ上で“検索する”ということは、「OCRにかけてテキストデータ化しなければならない?」と考えるかもしれないが、そうではない。検索機能の確保は、指定の項目を“システム上に手入力(記録)”することでもクリアできる。改正電帳法における、検索機能の要件は以下の通りだ。
例えば「21年8月31日付で、 税込190万円の請求書が、アイティメディア株式会社から郵送で届いた」とする。この場合、「紙」をスキャンしてデータ化したあと、〈A〉21年8月31日、〈B〉1,900,000、〈C〉アイティメディア株式会社という3項目を管理システム上に手入力すれば(1)の条件はクリアになる。
(2)(3)は改正電帳法により要件が緩和された部分。現行法では日付または金額は範囲指定が、加えてA&Bなどいわゆるアンド検索が必要だが、「税務職員による質問検査権に基づくデータ(検索項目のCSVデータなど)のダウンロードの求めに応じられるなら、それをもって代替可能」となっている。
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