明日から使える! 行動経済学をマーケティングに生かす「4つの類型」:現場で使える行動経済学【後編】(1/3 ページ)
行動経済学を自社のマーケティングに活用するために、押さえておくべきポイントを紹介する。数多くある行動経済学の理論の「4つの類型」とは? 効力が薄れてしまう使い方を避けるにはどうしたらいいのか?
この数年で話題になることが増えた「行動経済学」。この理論を自社のマーケティングに活用するには、どのように取り組むべきか──。
行動経済学の基本について解説した前編に続き、楠本和矢氏(博報堂コンサルティング執行役員、HR Design Lab.代表)に話を聞いた。
「失敗して当たり前」と捉えよ
行動経済学をビジネスに落とし込む際、初めから期待した効果を得ることは極めて難しいという。行動経済学は人間の感情や心理といった極めて不安定なものを相手にするアプローチであるため、あらゆる状況下で有効だとは限らないからだ。
行動経済学には前編で紹介した「ハロー効果」「一貫性の原理」「アンカリング効果」のようなさまざまな理論が含まれており、企業はこれらの中から自社の要件に最も合致すると思われるものをピックアップして適用する。
これらの理論はそれぞれの提唱者によって実験が繰り返され、実証されたものではあるものの、実験が行われた環境と現実のビジネスの環境とは大きく異なる。そのため、ビジネスの実践において実験と同じような結果が得られるとは限らない。
従って、初めから「この理論を適用すれば絶対にうまくいくはずだ!」と決めつけるのは禁物だ。むしろ、「失敗して当たり前」ぐらいに構えておくことが大事だと楠本氏は言う。
「失敗することを前提として実行し、その結果を検証して仮説を立て、さらにそれをまた実行に移してその結果を検証するという仮説・検証のプロセスを何度も回しながら、少しずつ精度を高めていくというアプローチが求められます。こうしたやり方をスムーズに運ぶためには、それに適した戦略や体制、プロセスを構築しておくことが大事です」
逆に、適用する手法の「論理的な正しさ」を重視する風潮が強い組織では、結果がすぐに出ないと「この手法は論理的ではないから役に立たない」とすぐに切り捨てられてしまうかもしれない。
そもそも行動経済学は、従来のような論理的一貫性を重視した経済学やマーケティング手法の限界を突破するために、人間の感情や心理といった非論理的な領域に着目する。従って、これまでのような論理重視型の経済学やマーケティング手法に長けた人ほど、こうした非論理的なアプローチには違和感を覚えるかもしれない。
「こうした従来とは異なる行動経済学特有の考え方を、まずは組織で意思決定権を持つ人にきちんと理解してもらう必要があります。これをやらずにいきなり現場の担当者だけが先行してしまうと、周囲の理解を得られないまま孤立してしまう恐れがあります」
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