キャッシュレス化のカギはクレカ! お店を悩ます「加盟店手数料が高い問題」を考える:海外の動向は?(3/4 ページ)
日本はキャッシュレス化が遅れている。カギとなるのはクレジットカードだ。ネックとなる“加盟店手数料が高い問題”とは?
海外の手数料は日本よりも低い
カード会社間の手数料は、ビザやマスターカードといった国際カードブランド各社が設定しています。世界では40の国と地域が標準料率を規制したり、数値を公開したりしています。
欧州では手数料の上限を0.3%とする規制を15年に導入しています。
米国では06年から手数料を自主的に公開し、1%台の会社もあります。オーストラリアでは料率の公開が法令で決まっているなど、手数料の公開は世界では当たり前になっています。
しかし日本では「業界全体のメリットや影響など議論が必要」(大手カード会社)として公開には慎重です。手数料を公開することで、加盟店手数料引き下げ圧力が強まる可能性があります。結果として消費者へのポイント還元の減少、年会費上昇、カード解約者の増加につながり、クレカ利用の促進を損なう恐れもあります。
しかし、このままカード会社間の手数料が不透明な状況が続けば、加盟店手数料が下がることはなく、店側の協力が得られなくなり、カード会社の経営にも影響がでる可能性もあります。つまり、カード会社にとっても避けては通れない課題なのです。
経産省が21年1〜3月、中小企業1189社に対してアンケート調査を実施した結果では、45%の企業が「カード決済を導入していない」と答えています。導入率が比較的に高い小売業、飲食業で未導入企業はその理由として「加盟店手数料の高さ」を挙げています。
最新の調査では、QRコードの決済手数料はキャンペーン効果もあり0%台が圧倒的です。一方、クレカは3%台の手数料となっています。「加盟店手数料の上限は何%が適当か?」という設問に対しては「2%台まで」という意見が8割を占めています。
この結果からも、現在の加盟店手数料では負担が大きく、クレカの利用率を上げようにもなかなか上げにくい現状が見えてきます。
しかしこの手数料、全ての小売店が3%台というわけではありません。各社の売り上げ規模に応じて手数料は変わっているのが現実です。
公正取引委員会が19年に調査した「クレジットカードに関する取引実態調査報告書」によれば、年商5000万円以下の企業では加盟店手数料が4%以上、1億〜10億円までの企業は3%台、10億〜100億円までの企業は2%台、100億円以上になると1%台へと下がります。
つまり、売り上げが10億円以上あれば、手数料は2%程度に抑えることも可能です。しかし、中小の小売り・サービス業にとって10億円の売り上げを上げるのは容易ではありません。ここは企業業績とは別に、抜本的に変えていかなければならないでしょう。
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