ソニー、デジカメ好調で上方修正 それでも「カメラ市場が復活した」と言い切れない理由:本田雅一の時事想々(1/3 ページ)
ソニーグループが2022年3月期(21年4月〜22年3月)通期の営業利益の見通しを上方修正した。意外だったのは、カメラ事業の回復がグループの成長全体にプラスとなっていると言及されたことだった。
ソニーグループが2022年3月期(21年4月〜22年3月)通期の営業利益の見通しを上方修正した。意外だったのは、カメラ事業の回復がグループの成長全体にプラスとなっていると言及されたことだった。
現在のソニーグループは前社長だった平井一夫氏時代に進められた事業統合や整理などが功を奏し、稼げる企業に脱皮した。平井体制の後半をともに築いてきた現在の吉田憲一郎社長は、稼げるソニーを洗練させ、新しく稼げる領域の開拓を目指している。
とはいえ足元を見ると、ソニーが稼ぐことができているジャンルは、先人たちが残した遺産に頼っていると言わざるを得ない。ゲーム、カメラ(イメージセンサー)、フィンテック。これらのジャンルは今後も利益を生み続けるだろうが、しかし大きな発展性が望めるかといえば、そうではないだろう。
と、未来の話はともかく前年比2.6%増の9800億円へと通期営業利益の見通しを上方修正した理由の一つは、デジタルカメラの販売が復調したことだった。テレビなどの売り上げ増は予想の範囲内だったが、旅行やイベントが抑制される中でのデジタルカメラの復調は予想外だったということだろうか。
十時裕樹・副社長兼最高財務責任者は、決算会見で「ワクチン接種が各国で進んだことで(稼げる製品である)フルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼市場が回復した」と話した。
営業利益が1兆円に達しようかというソニーグループの利益を押し上げたのだから、これは業界全体も押し上げているに違いない。そう考えて「デジタルカメラ、戻ったらしいね」という話題が筆者の周りでも出始めたのだが、ここは読み違えてはいけない。
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