ソニー、デジカメ好調で上方修正 それでも「カメラ市場が復活した」と言い切れない理由:本田雅一の時事想々(3/3 ページ)
ソニーグループが2022年3月期(21年4月〜22年3月)通期の営業利益の見通しを上方修正した。意外だったのは、カメラ事業の回復がグループの成長全体にプラスとなっていると言及されたことだった。
カメラ市場の成熟は今に始まったことではない。コロナ禍を抜けてデジタルカメラ市場が復活した、なんてことがないことは、カメラを開発し、販売する現場は承知のことだ。
ある老舗カメラメーカーのOBは「カメラメーカーは過去に、何度も“事業の喪失”ともいえる経験をしてきている」と、事業環境の変化に追従する柔軟性がカメラメーカーには備わっていると話す。言い換えれば、そうした事業環境の急変に対応してこなければ、現在、カメラメーカーとしては生き残ってこなかったということだろう。
言い換えれば、どんな市場変化が起きたとしても適応できる自信があるということだ。デジタルになってカメラ本体(ボディー)は製品寿命が短くなったが、レンズなどシステムを構成する他の要素の製品寿命は以前のまま。
このシステムカメラのエコシステムを維持できる限りは、デジタルカメラの市場は底堅い。またコロナ禍での今回の売り上げ激減から立ち直るプロセスでは、一眼レフからミラーレス一眼への構造変化を大きく加速させるだろう。もともと進んでいたプラットフォームの移行は、ここで決定的になると予想する。
元の売り上げ規模に戻るのか、あるいはそれを超えてくるのかは予想しにくいが、同レベルに回復したとき、システムカメラの市場における主役は様変わりする可能性がある。
すでにミラーレス・フルサイズのジャンルではソニーが主役だが、業界全体の顔としてソニーがスチルカメラメーカーの名実ともにトップメーカーになると予想する。個人的には、ソニーがトップになるのであれば、伝統的なカメラメーカーと同等の握りやすさや使いやすさを普及モデルでも徹底して欲しいところだ。
と、余分なことを書いたが、そんな批判の声があったとしても、カメラ市場が回復する中でソニーの存在感は増していき、ソニーグループを支える柱の一つとしてさらにその地位を盤石にしていくだろう。
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