「菅首相辞任」から考える、「トップに向かない番頭」はどんな人か:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
菅義偉首相が退任に追い込まれた。この報道を受けて、「社長の右腕」の皆さんも、さぞガッカリされているのではないか。なぜかというと……。
トップを守るために
菅首相が叩かれ始めたとき、安倍首相が「菅総理には菅官房長官がいない」と言ったと報道されたが、まさしくあれは的を射た発言だったのだ。
そしてもう一つ、「トップに向かない番頭」には、「ネガティブなイメージを引きずっている」という特徴もある。海外の経営者のサポート役と異なり、日本の番頭システムの最大の特徴は、トップを守るために、嫌われる役や汚れ役を買って出る部分がある。
なぜこうなるのかというと「ルーツ」が影響している。日本企業の番頭は、その言葉の通り、江戸時代の商家の番頭制度がベースとなっている。
大店(おおだな)の番頭は、「家」を存続させるため、とにかくその血を引く主人に忠誠を誓う。商売人としてサポートはもちろん、奉公人のマネジメントを代わりに行い、さらには、主人が安心して隠居できるように、後継者の教育まで担当をする。「家」を守るためならば、ときには非合法の仕事にも手を染めるし、隠し子など主人のスキャンダルもカネで揉(も)み消した。
そんな「商家の番頭」に、近代化で「現場の親方」という性格も加わった。これによって、トップへの忠誠心に加えて、トップの代わりに、会社や工場の現場を取り仕切って、従業員を動かしていく「現代版番頭」というシステムが確立された、と言われている。
このような出自なので、どうしても番頭の中には「汚れ役」「嫌われ役」に特化した人々がいる。トップの後継者候補でもなく、トップの経営判断を支える参謀でもない。トップを守るために、嫌われるような改革を断行したり、悪い話をモミ消す役割だ。
関連記事
- 「オレが若いころは」「マネジメント=管理」と思っている上司が、ダメダメな理由
「オレが若いころは……」「マネジメントとは管理することだ」といったことを言う上司がいるが、こうした人たちは本当にマネジメントができているのだろうか。日本マイクロソフトで業務執行役員を務めた澤円氏は「そうしたマネージャーは、その職を降りたほうがいい」という。なぜかというと……。 - 「安いニッポン」の本当の恐ろしさとは何か 「貧しくなること」ではない
新聞やテレビなどで「安いニッポン」に関するニュースが増えてきた。「このままでは日本は貧しくなる」といった指摘があるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしていて……。 - こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.