社員の「心」と「体」をどう守る 総務が考えるべき「健康経営」のカギ:「総務」から会社を変える(4/4 ページ)
昨今話題の「健康経営」だが、コロナ禍で社員の健康に危機が迫っている。果たして、総務としてどうすればいいのか。
コロナ禍では、身体のみならず、精神面に不調を来す従業員も多い。在宅勤務では、何かあった際もすぐに相談できないことにより、不安や問題を一人で抱え込んでしまいがちだ。特に新入社員や年次が若い社員は、仕事の指示が適切にもらえず、何をしていいか分からず、自分の存在意義に不安を持ってしまうこともあるだろう。コロナに罹患(りかん)してしまわないか気になる、あるいは感染した後で周りからの差別や偏見におびえてしまう――強制的な在宅勤務等、働き方が大きく変化することに対しての不安、それに適応できないことへの焦りは、考えればきりがないほどだ。
一言で表現するなら、こうしたメンタル面での不調の原因は「コミュニケーションの希薄化」、これが最大の課題である。対応方法としては、とにかくコミュケーションの量を増やす取り組みが肝要だろう。それもフランクな、ざっくばらんな会話ができるような仕掛けである。
一緒に同じモノを食べながら、ランチしながらたわいのない話をする。決まった時間にコーヒーを飲む時間を作る。コロナ前であればこうしたこともできたが、今はオンラインに場を移すしかない。例えば、テーマはなくとも話ができる場をオンライン上で提供する、あるいは、社内SNSで、独り言をつぶやいてみるのはどうだろうか。「あー、今日も疲れた」「これ、どういうことだか分からないなあ」――あくまで、誰かがレスポンスしやすいような内容というのを心掛けてみるといいだろう。
最近では、オンライン上で仮想オフィス空間を作り、そばに行くと声がかけられるようなシステムも出てきた。変革期に直面し、いろいろなツールが存在しているので、ぜひ情報収集してみるといい。
ちなみに、月刊総務では、オンラインコミュニケーションの優秀な施策を募って、表彰する取り組みを8月に行った。その中で、入賞した企業の事例がプレゼン動画として視聴できるアーカイブを公開しているので、ぜひ参考にしていただければ幸いである。
本記事では、健康経営に対する課題を見てきた。あらためて、在宅勤務が主流になることで、オンラインコミュケーションのインフラ整備と、その上での仕掛け、運用を時代に合わせてデザインし直す必要があるだろう。常に現状に満足することなく、変化に対応し続けられる総務こそ、戦略総務なのだ。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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