クックCEOがウェイボ投稿、iPhone 13が中国で大人気の理由:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/4 ページ)
アップルが9月14日、iPhone 13シリーズを発表した。同社にとって中国の重要性はマーケット、生産拠点の両面で年々高まり、今年第3四半期の売上高に占める中国の割合は18%に達した。「新規性がない」との声も多かったiPhone 13だが、予約開始時にはオンラインストアが一時ダウンし、予想以上の好調を見せている。
ファーウェイ不在の高価格市場独占狙う
発表時の中国では「新味に乏しい」との評価が多かったiPhone 13シリーズだが、ふたを開けてみると予想を上回る好調ぶりを見せている。中国銀河証券は今年のiPhone 13のグローバルでの販売数が、前機種より10%増えると予測する。
好調の最大の理由は、「割安感」と見られている。最も安いiPhone 13 mini(128ギガバイト)は5199元(8万7898円)で、昨年発売されたiPhone 12 mini(64ギガバイト)の価格を300元(約5000円)下回る。
アップルはブランド力を背景にiPhoneの価格を年々上げていたが、2018年秋に発表したXシリーズは最も安いXR(64ギガバイト)で6499元と日本円にして10万円を超え、中国ユーザーもついていけなくなった。
同時期にはファーウェイ(華為技術)、OPPO、vivoなど中国勢が台頭し、19年のグローバルでの販売数でアップルはファーウェイに抜かれ3位に転落した。
消費者が冷静になったことで、戦略を見直さざるをえなくなったアップルはiPhone 11シリーズ以降は価格で値ごろ感を出して徐々に復活。
調査会社のIDCによると、20年上半期に中国のハイエンドスマホ(約6万6000円以上)市場でアップルとファーウェイはほぼ拮抗していたが、米政府の規制によりファーウェイがスマホ生産を制限され、今年1-3月にはアップルがファーウェイを大きく引き離した。
ファーウェイ不在の隙にシャオミやOPPOもハイエンド市場に攻勢をかけているが、アップルは割安感のあるiPhone 13だけでなく、iPhone 12も値下げすることで、アンドロイド端末からの乗り換えを促進し、シャオミ、OPPOの返り討ちを狙っている。
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