実は拡大が続く「リユース市場」 将来は“新品”を上回ると確信できる理由:SDGsも追い風(3/4 ページ)
日本の中古市場が拡大している。細分化・専門化しているのが特徴だ。今後、新品を中心に販売するタイプではなく、リユースを中心とした中古品市場が小売りの中心になるかもしれない。
リユース市場の再拡大が始まった
市場というのはある程度大きくなり、成熟期を迎え安定期に入り始めると、カテゴリー内の商品の細分化が始まります。洋服の中でもストリートブランドの古着だけを扱う店や、シャネルなど高級ブランドのヴィンテージバッグだけを扱う店といった具合に内容が細かくなっていきます。専門特化が始まると、市場はそこからさらに拡大していきます。
最近になって筆者が「リユース市場が再拡大し始めた」と実感した例があります。
それは「キャンプギア用品のビンテージ品」の登場です。
総合リユースショップのセカンドストリートを運営するゲオホールディングスは、2021年3月期の決算で全体の売り上げを伸ばしました。特にリユース系が好調で、メディア以外のリユース系が116%と二桁の伸びを見せました。キャンプ用品を含むスポーツ・フィットネス関連商品の売上高が20年比で116%、買取金額も111%と増加しています。
フリマアプリ大手のメルカリでも20年度のキャンプ関連用品購入量が増加しており、ストーブ・コンロが20年比で2倍、調理器具が2.1倍に増えており、キャンプ用品の中古ギア商品の流通が確実に増えているようです(参考:日本経済新聞2021年8月18日付「中古キャンプ用品、“ゆる”くない高騰 定価の3倍も」)。
最近は特定のキャンプ用品やブランドの型番指定や品番指定での問い合わせがリユースショップで増えています。SNSの拡散によって、昔のアウトドア用品、キャンプギアを使っている写真を見て「かっこいい」と注目が集まり、中古キャンプギアが盛り上がっているのです。
中でも米国のアウトドアブランドである「コールマン」のランタンは特に人気が高いアイテムです。
有名なのは、「Model 200A」です。1951〜84年頃まで、マイナーチェンジを繰り返しながら発売されてきました。同じようなランタンに見えますが、よく見てみると、少しずつ趣が異なっているのが分かります。コールマンのビンテージファンは、製造年代によるこうした微妙な違いを楽しみ、愛称をつけて親しんでいます。
人気の理由は以下の通りです。
(1)定期的に発売されロングセラーになっている定番商品であること
(2)ランタンというキャンプに必要不可欠な商品であること
(3)生産年代によって微妙な違いがあること
(4)商品のもともとのデザイン価値が高いこと
製造年代によって赤の色目が多少異なっていたり、つまみの形状や長さが変わっていたりといったように、目を凝らしてみないと違いがよく分かりません。しかし、その微妙な違いがキャンパーの心をくすぐり、憧れの商品となって価格が高騰しています。
自分の生まれ年のコールマン200Aランタンは「バースデーランタン」と呼ばれ、特に人気が高くなる傾向があります。
コールマン・ジャパン(東京都港区)が日本国内で独自に企画し、米国工場で製造している「シーズンズランタン」という限定商品が特に人気です。「2007ウィンター」は07年発売当時、2万6250円だったものが、最近のネットオークションにおける平均落札価格では8万9000円。なんと3倍以上の高値となっています(9月6日時点)。昨年は最高値でも5万3000円でしたから、この1年で約1.7倍に跳ね上がっています。
キャンプギアの中古市場が急速に広がっているのは、コロナによるアウトドア・キャンプブームにより、キャンパーが増えていることが一番の理由です。キャンパーが増えるということは、キャンプ初心者が増えることを意味します。初心者が増えてくると、本物のキャンパーの持っているギアやキャンプの仕方など、細かいところに注目が集まってきます。結果的にこのランタンのような「本物」に注目が集まり、キャンプ用品の中古ギア市場が確立されていくのです。
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