安いだけじゃない 「トップバリュ」「みなさまのお墨付き」の隠れたヒット商品とは:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
イオンの「トップバリュ」や西友の「みなさまのお墨付き」といった低価格PB。単に安いだけではなく、独自商品が支持されヒットにつながっているケースもある。どのような商品が売れているのか。
カット野菜が定番のベストセラー
ローソンストア100のPB「バリューライン」は、信頼するメーカーと共同開発した、小分け適量サイズの100円均一(税別)のブランド。
商品は、カット野菜などの野菜と果物、ソーセージなどの肉、チーズなどのディリー食品、加工食品、冷凍食品、パン、デザート、アイス、調味料、菓子、飲み物、酒、雑貨と幅広く、約800品目に及ぶ。
ローソンストア100は全国に671店(21年8月末時点)あり、住宅街立地が主流。男女比は55:45で、男性がやや多い。そして、50代以上の顧客が4割と、普通のコンビニよりも年齢層が高い人が来店する特徴を持つ。そこで「献立応援コンビニ」というコンセプトを考案し、それに沿った商品を発売している。
例えば、カット野菜は定番のベストセラーだが、天候不順で野菜の価格が高騰した9月には特によく売れた。「VL ざく切り白菜(220g)」が前月比119%、「VL さく切りキャベツ(220g)」が同116%、「VL カットレタス(105g)」が同131%、などとなった。
バリューラインのカット野菜は、「キャベツ野菜炒め」なども分量が多く、一般的な野菜炒め用カット野菜に比べて3〜5割は多いように見える。その面でも献立応援になっている。
また、「VL 強炭酸水(1.3L)」は、酒の割材として開発され、差別化商品として売ってきたが、近年はのど越しのさわやかさが受けて、そのまま飲む人が増えている。
その他、小分けされたバター、キムチ、たっぶりサイズ(210グラム)の果物入りゼリーをそろえる。さらにた、あたりめといった酒のおつまみが、ちょっと足りないと思う時に、100円均一で販売されているのが支持されている。冷凍食品では、200グラム入ったチャーハン、エビピラフ、ドライカレーなどの米飯が販売されている。
このように、トップバリュ、みなさまのお墨付き、バリューラインといった低価格PBは、単に安いのでなく、信頼できるメーカーと長期的な契約を結んで商品開発を進め、そのチェーンでしか売っていない魅力的な商品を続々と生み出している。各チェーンが切磋琢磨して、日本のものづくりのレベルをさらに向上させていってほしい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
お知らせ
新刊『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか? 挑戦する郷土の味』(交通新聞社新書)が10月15日に発売されました!
駅弁といえば、かつては駅や列車内で買って食べる、列車旅に欠かせないものだった。それが今やスーパーでも見かけるほどに、日常的で身近な存在となっている。
元は「駅の駅弁」だったのになぜ、駅を離れて販路を広げることができたのか?
列車の高速化やモータリゼーションの煽りを受け、さらにコロナ危機にも直面し、駅で売れない状況に追い込まれながらも生き残る、駅弁の謎に迫る一冊。
◆「駅で売れない駅弁」だった?「いかめし」ヒットの理由を探るべく、いかめし阿部商店・今井麻椰社長にインタビュー!
◆コラム「駅弁はなぜ、高いのか?」など
◆巻末には「京王百貨店駅弁大会歴代売り上げベスト5」収録
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 「100円×3個=301円」問題でセブンが公式に謝罪 見習うべきは「イオン方式」か
「税込100円×3個=301円」問題で混乱が起きたセブン。お客が困惑した根本原因は事前告知が不足していたことだ。ただ、イオンが採用する価格表記を採用する道もあったかもしれない。 - スーパーの「アピタ」と「ピアゴ」がどんどん“ドンキ化” 一方で住民から不安の声も
スーパーの「アピタ」と「ピアゴ」が“ドンキ化”している。運営会社は2022年をめどに、約100店舗を業態転換する方針だ。その一方で、生まれ変わる予定のアピタ岐阜店の周辺住民からは不安の声が出ている。 - “毎日安売り”のオーケーとコスモスが着々と進める“西友包囲網”
ウォルマートによる売却報道が飛び出た西友は、毎日安売りをするEDLP(Everyday Low Price)で苦戦している。しかし、同じスーパー業態のオーケーや、ドラッグストアのコスモス薬品のように、EDLPで成功しているケースもある。どこで差がついたのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.