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二転三転の電子帳簿保存法、紙で保存可能な「やむを得ない事情」とは?(2/2 ページ)
電子受領データの電子保存を義務化する、電子帳簿保存法の改正について、2年間電子保存義務を猶予する内容が盛り込まれた。しかしその条件とされている、「やむを得ない事情」とは何か。
猶予の条件 「やむを得ない事情」とは?
ただし法改正がなくなったわけではなく、条件付きの経過措置だ。税制改正大綱では、下記の2つの条件を挙げている。
- 所轄税務署長が電子取引情報の電子保存が要件を満たしていないことにつきやむを得ない事情があると認める場合
- 納税者が出力書面提示に応じる
この「やむを得ない事情」とは何か。電子帳簿保存法に対応した保管サービス「INVOICE POST電子帳簿保存」を提供するBEARTAILは、今回の税制改正大綱についてのホワイトペーパーを公表し、「やむを得ない事情の具体的な内容は、今後の国税庁の見解発表が待たれる。また『紙保存可能』とする内容の措置ではない点に注意が必要」としている。
また、Sansanで請求書受領サービスBill Oneを担当し、公認会計士でもある柴野亮氏は、例示列挙が開示されていないため「やむを得ない事情」というだけでは、どのようなものか分からないとしながらも、「『やむを得ない』基準が高いと、2年の猶予措置の意味がないので、ハードルは低いものになるのでは」と話した。
二転三転しながらも、一応はこれまでの紙での保存を継続しながら、企業は2年間のうちに電子化対応の準備を進められることになりそうだ。中小企業向けの会計ソフトを提供する弥生の岡本浩一郎社長は、「ああ、よかった。これで全事業者がホッと来年の1月を迎えることができます。(略)要はこの先2年間は、これまで通りの運用(紙出力して保存)でも問題はないということです」とブログに記した。
なお、この件の詳細は、今後公開が見込まれる省令や通達で明らかになる見込みだ。
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