不正転売について考えてみた:どのように転売ヤーにとっての魅力をなくすか(2/5 ページ)
メルカリをはじめとする「二次流通業者」の存在感が大きくなっている。 しかし、残念ながら二次流通業と消費者との関わりポジティブな側面だけでなく、ネガティブな側面もある。その代表が「不正転売」だ。本レポートでは、メルカリとUSJの転売対策など、企業の事例を取り上げる。
1――メルカリとユニバーサル・スタジオ・ジャパンが結んだ協定
2021年11月22日、フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリとテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営する合同会社ユー・エス・ジェイは、「マーケットプレイスの共創に関する覚書」を締結した(※1)。この協定では、両社が商品情報や発売情報を事前に共有し、特定の新商品発売前後の注意喚起や権利侵害品対策などについて連携し、より安心・安全に取引ができる環境を構築することが目的となっている。
現代市場においてメルカリをはじめとする「二次流通業者」の存在感は大きなものとなっている。従来のビジネスモデルでは、企業(小売り)が商品をメーカーから仕入れ、店舗やネットを通じて消費者に商品を提供する「一次流通業」が主な流通チャネルであった。この場合、日用品から車や宝石に至るまで消費者はメーカーや販売業者から財を購入する事が商流の習わしであり、このビジネスモデルは一般的に「BtoC(Business to Consumer)」と呼ばれている。
それに対して二次流通業とは、オークションやフリーマーケットで中古品を販売するビジネスを指す。もともとわれわれになじみのあった二次流通業は、消費者が一度購入したものを古物商許可を持つ業者が買い取り、それを再販するというビジネスモデルであった。これには古本屋や古着屋、中古の高級ブランド品を販売する質屋やリユースストアなどが該当する。しかし、昨今では消費者と消費者の間に間接的に業者が仲介し、実質消費者間で取引が行われる「CtoC(Consumer to Consumer)」の取引も一般的になってきている。本レポートで取りあげる「メルカリ」や「ヤフオク!」「ラクマ」などがその一例である。
2021年9月30日よりメルカリは「それ、新品じゃなくてもいいんじゃない?」と、新品ではなくとも中古品でも場合によっては十分に購入者のニーズを満たすことができる、といった旨のメッセージをCMで発信している。最近耳にする回数が増えたSDGs(Sustainable Development Goals)の観点からも、廃棄されるものが減り、持続可能な消費と生産サイクルへの配慮がなされ、商品が消費者間で循環されていくことは、結果的に環境に配慮した取り組みへとつながっていくのである。
(※1)メルカリとユー・エス・ジェイ、安心・安全な取引環境の構築に向けた包括連携協定を締結(2021/11/22)
関連記事
- PS5が発売 横行する転売屋に対するソニーの戦略とは?
新型ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」が11月12日に発売する。横行する転売に対して、ソニーは増産体制を構築しようとしているものの……。 - 議員“マスク転売問題”から考える、転売ヤーの利益の源泉
"転売ヤー”が転売を正当化する論拠は、「需要と供給のバランスが崩れた価格設定となっているため、市場原理に則って価格をさや寄せしているにすぎない」というものである。需給バランスの偏りに根ざした正当なものだという主張があるが、その実態は消費者の信頼を換金しているにすぎない。 - PS5、ニンテンドースイッチ、鬼滅グッズ 2020年「転売ヤ―の経済学」
2020年は、商品を買い占めて高値でネット転売をする「転売ヤー」が最も目立った年でもある。PS5、ニンテンドースイッチ、鬼滅グッズなど転売の実情を振り返る。メーカーが販売店に強く出られない事情とは? - 本当はやりたくない? メルカリ、マスク高額転売「緊急事態宣言」で漏らした本音
メルカリがマスク販売に関する「お願い」を発表した。新型肺炎の影響でマスクが品薄となり、メルカリ上での転売が増えている。今後は状況により、入手経路の確認や商品の削除などを行う可能性があるという。
Copyright © NLI Research Institute. All rights reserved.