「月末に1日だけ取得すればお得」 男性育休の“抜け道”を、会社側は制限できるか:社労士・井口克己の労務Q&A(1/3 ページ)
当社では男性育休を推進していますが、賞与支払のある月の月末に1〜3日間と短期間の取得が目立ちます。「月末に育児休業を取得するとお得」という情報をもとに申請しているようです。取得期間を最低1カ月以上と定めることはできますか?
連載:社労士・井口克己の労務Q&A
労働法に詳しい株式会社Works Human Intelligenceの社労士・井口克己氏が、人事労務担当の素朴な疑問を解決します。
Q: 当社では男性の育児休業の促進に取り組んでいます。社長からメッセージを発信し、社内のポータルサイトで男性育休取得経験談も多数公開しています。このような努力の結果、近年、男性の育児休業の取得率は順調に上昇しています。
しかしながら、賞与支払のある月の月末に1〜3日間と短期間の取得が目立ちます。「月末に育児休業を取得するとお得」という情報をもとに申請しているようです。
本人に悪気はないのですが、こういった取得は法の本来の趣旨に反すると考えられます。また、数日間とはいえ育児休業に関する手続きは給与担当には1年間取得の場合とほぼ同じだけ手間がかかります。こういったことから、育児休業を取得する場合は最低1カ月以上と定めたいのですが、問題ないでしょうか?
社労士の回答は?
A: 育児休業の取得期間に最低取得期間を設けることはできません。育児休業は社員の正当な権利です。期間が短いからという理由で取得を拒むことはできないのです。
短期間の育児休業の取得を希望する社員には法の趣旨や、産後の配偶者のケアの重要性、この時期に子どもと接することで得られるものなど、一定期間以上の育児休業を取得しないと経験できないような事例を説明するなど、本人が長期間育児休業を取ってみたいと思えるように説明をつくしてください。
また、ご質問にあるような“お得感”は、2022年10月の社会保険料に関する法改正によって半減します。法改正の内容についても解説します。
育児休業の取得可能期間について
育児休業の取得可能期間は、子の出産日からその子が満1歳に到達する日まで労働者の希望する期間とされています。使用者は勤続期間や週の勤務日数など要件を満たした労働者から育児休業の取得の申出を受けた場合には、それを拒むことができません。「経営が困難である」「業務が繁忙」といった理由も認められません。
育児休業の取得は、労働者の正当な権利のため取得期間の長短で拒むことはできないのです。1日という短期間の育児休業の取得も認めざるを得ません。
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