「月末に1日だけ取得すればお得」 男性育休の“抜け道”を、会社側は制限できるか:社労士・井口克己の労務Q&A(3/3 ページ)
当社では男性育休を推進していますが、賞与支払のある月の月末に1〜3日間と短期間の取得が目立ちます。「月末に育児休業を取得するとお得」という情報をもとに申請しているようです。取得期間を最低1カ月以上と定めることはできますか?
22年10月の法改正にも“抜け道”がある?
社会保険料免除を目的とした短期間の育児休業については、政府も問題視しています。その抑制策として22年10月から育児休業の取得要件の緩和と社会保険料免除に関して法改正を実施しました。
改正内容のうち育児休業の社会保険料に関するものは以下となります。
- (1)産後パパ育休の新設:出産日から8週間以内で4週間上限で2回取得可能
- (2)育児休業の分割:子が1歳に到達するまで2回まで分割取得可能
- (3)給与の社会保険料の免除の緩和:同じ月に育児休業の開始と終了がある場合はその期間が14日以上ならばその月の社会保険料を免除とする。
- (4)賞与の社会保険料の免除の厳格化:育児休業の期間が1カ月以下の場合は、賞与の社会保険料は免除とならない。
この改正によって、月末に1日だけ育児休業を取得しても、給与と賞与の社会保険料が同時に免除されることはなくなります。同じことをするには1カ月を超える育児休業を取得する必要があります。
この部分が、政府が社会保険料免除を目的とした育児休業の短期間取得の抑制策となります。しかし、これにも新たな抜け道がありそうです。
今回の改正では、産後パパ育休の新設と育児休業の分割取得の緩和によって育児休業を4回まで取得可能になりました。しかし、給与については、月末1日だけ育児休業を取得することで社会保険料が免除される扱いは継続されます。
つまり、配偶者の出産から子の満1歳の誕生日までに、4回の育児休業全てを月末1日だけ取得することで、4日間分の育児休業で4回分の給与の社会保険料が免除になります。
賞与の社会保険料が免除にならないとしても、給与の社会保険料の免除の回数を増やすことで手取り増額の技は利用できそうです。
政府はこの法改正によって、社会保険料免除を目的とした短期間の育児休業の取得の抑制を期待していますが、分割取得が認められたことよってその効果は半減したと言えます。
まとめ
社会保険料免除を目的とした短期間の育児休業の取得は、おそらく今後も続くと考えられます。法の趣旨にそったものとはいえないかもしれませんが、制度にそった手続きを経て活用しています。また、手にしたお金がその社員のお小遣いになってしまうのであれば問題ですが、子育て家庭に対する経済的な支援と考えてはいかがでしょうか。会社として積極的に進める必要はないと思われますが、ことさらに活用を妨げる必要もないと思われます。
今回の育児介護休業法の改正では、新たな育児休業の新設や社会保険料の免除基準の変更だけではなく、男性社員が育児休業を取得しやすくするように職場環境を整備することも盛り込まれています。安心して育児休業を取得できる職場環境を整備することで、一定期間以上の育児休業を取得してもらってはいかがでしょうか。
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