「Nintendo Switch」品薄の裏にある大きな世界情勢のうねり:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
Nintendo Switchが半導体不足で手に入らない状況が続いている。その裏には、何があるのか。
米国政府が半導体に力を入れる理由
米国政府は、特に最近、こうした半導体にはかなり力を入れている。というのも、世界の未来は半導体が不可欠になってくるからだ。経済産業省によれば、「半導体は、5G、ビッグデータ、AI、IoT、自動運転、ロボティクス、スマートシティ、DXなどのデジタル社会を支える重要基盤であり、安全保障にも直結する死活的に重要な戦略技術」とされている。
そこで自国が弱いとされる半導体の製造部門に500億ドル(約5兆5000億円)を投入すると発表したばかりだ。さらに、台湾のTSMCをアリゾナ州に誘致することに成功している。これには、半導体のサプライチェーンで中国を牽制する目論見(もくろみ)もある。
そんな世界の中で、日本の立ち位置はどうなっているのか。
日本は1980年代に、世界では半導体分野で50%のシェアを誇っていた。しかし、日米半導体協定による貿易規制(貿易摩擦)が強まり、国内のデジタル産業化の遅れなどがあいまって、見事なまでに衰退した。
ただ今でも、半導体製造に使われるシリコンウエハや製造のための装置の世界的シェアは高く、存在感を示している。またパワー半導体の分野は、世界シェアの3割(20年)を占めている。
また日本は、経産省の2年におよぶ「作戦」によって、TSMCの工場の日本誘致(熊本県)に成功している。政府が補助金として4000億円ほどを提供することになっており、24年には稼働される予定である。
この誘致については、一部報道などで「日本の工場ではTSMCは10年前の技術の半導体を製造する」と叩かれていたが、これには理由がある。そもそも、iPhoneなどの最先端技術で作られた半導体を必要とする製品を日本企業が製造しているわけではない。
TSMCからしてみれば、最先端の半導体を日本で作っても、日本がそれを国内で大量供給できないないため、そのレベルの半導体を作る工場は日本には必要ないとの判断だった。日本側もそれには賛成で10年前の技術といっても自動車などで十分に使えるレベルなので、日本市場向けには理にかなっているという判断であった。また政府は大学などとの共同研究も推進しており、今後の半導体分野で日本も置いていかれないようにしている。
こうした半導体を日本国内で製造するのは、国の安定のためにも重要である。
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