会社のトップが大好きな「戦国武将に学べ」が、パワハラ文化をつくったと感じるワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』がスタートした。SNS上で「おもしろい」と話題になっているが、時代劇の中でも「戦国武将」に目がない人たちがいる。経営者だ。筆者の窪田氏は「武将に学べ系コンテンツ」と「パワハラ」に微妙な関係があると見ていて……。
戦国武将の話が好き
以前、ある企業の外国人経営者にインタビューをしていたとき、「なんで日本の社長はあんなに戦国武将の話が好きなのですか?」と逆質問をされて、答えに窮(きゅう)してしまったことがある。
なぜかというと海外では、経営者が学ぶ歴史上の偉人といえば、経営者か政治家、社会活動家など相場が決まっていて、いずれも近代の人物が一般的だからだ。イノベーションやマネジメント、そして社会課題を解決する思考などが現代でも参考になるのは近代で、刃物や弓矢で殺し合っていた中世の軍人を挙げるのは少数派だ。
ちょっと古いデータだが、13年にコンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が世界68カ国・地域で1437人のCEOを対象に「尊敬するリーダー」を調査をしたところ、1位はウィンストン・チャーチル元英首相で、2位はスティーブ・ジョブズ。その後もインド独立の父、マハトマ・ガンジーやネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領、元GEのCEOジャック・ウェルチなどが続いて、10位でようやくナポレオン・ボナパルトが登場する。
しかし、日本の経営者はなぜかこうならない。松下幸之助を神様のように崇(あが)めている方も少なくないが、信長、秀吉、家康、信玄などの戦国武将を「尊敬するリーダー」として挙げる方がかなりいるのだ。筆者はこれまで100人以上の社長インタビュー、20人以上の社長の書籍・スピーチの代筆を経験しているが、戦国武将の名言を何度書いたか分からない。
もちろん、中国で「三国志」の関羽が商売の神様として崇められているように、歴史上の武人を現代の人々が今もリスペクトしているケースは海外でも多い。が、それは日本の経営者のように実際に彼らの戦術・戦略を学んで会社経営に活用しようとしているわけではないのだ。
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