カインズに売られた「東急ハンズ」は、なぜライバル「ロフト」と差がついたのか:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
東急ハンズをこよなく愛する人々の間に激震が走った。ホームセンター大手のカインズが親会社の東急不動産ホールディングスから買収することを発表したからだ。東急ハンズが低迷した背景に何があるのかというと……。
こだわりが過ぎる
セブン&アイやイオンが分かりやすいが、小売はどうしてもメーカーの取り分が大きいためPBを拡大したほうがもうかる。そこで東急ハンズもかなり力を入れている。分かりやすいのが、女性ファン獲得が期待できるコスメだ。muqna(ムクナ)、calmer(カルメ)、HACCO(ハッコウ)とさまざまなオリジナルブランドを立ち上げて、売り場でも多く場所を占めている。
こういうPBは他の小売も多かれ少なかれやっているが、東急ハンズの特徴はやはり圧倒的な品ぞろえだ。ノート、カレンダーなどでもオリジナルブランドが立ち上げられているほか、ヘルスケア、スーツケース、雨具、キッチン用品などありとあらゆる分野にハンズオリジナル商品がある。
ECサイトの「東急ハンズオリジナル商品一覧」というサイトにある「私たちの暮らしに寄り添うさまざまなアイテムに、東急ハンズならではのこだわりを詰め込みました」という文言からもその品質に絶対の自信があることがうかがえる。「商品のプロ」という「ハンズらしさ」を象徴したPBと言えよう。
ただ、そのような「こだわり」は素晴らしいと尊敬に値する一方で、筆者はちょっと「こだわりが過ぎる」のではないかという気もしている。東急ハンズに訪れる消費者はあくまで「良い品」を探しているだけであって、「ハンズ」のブランドに引かれているわけではない。ましてやイオンの「トップバリュー」のように、「コスパのいいもの」を欲しているわけではないからだ。
ライバル・ロフトの「オリジナル商品」は、1月17日時点でWebサイトに掲載されているものは17点しかない。オリジナルのコスメブランドも立ち上げているが、「ビーバイイーと共同開発」「松山油脂と共同開発」などと大きく掲げてコラボ感が強い。
東急ハンズのPBが、豊富な品ぞろえ、「私たちは商品のプロ」というのを前面に押し出した「らしさ」全開なのに対して、ロフトのPBはかなり肩に力が抜けている。東急ハンズのように自分たちが主役になるPBではなく、「たまたまいい商品見つけたので、相乗りしてみました」くらいに感じてしまう。
このあたりの「しなやかさ」が、ロフトの強みのような気がしている。
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