「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢がやって来るのだろうか。白物家電や邦画が追い抜かれたように、「日本のアニメ産業」も負ける日がやって来て……。
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢が再び繰り返されてしまうのだろうか。
最近、さまざまなメディアや専門家の間で、「日本のアニメ産業が海外で負けてしまうのでは」という脅威論が唱えられることが多くなってきた。
ご存じのように、アニメといえば日本のお家芸。ジブリにワンピース、進撃の巨人、最近では鬼滅の刃に呪術廻戦など、海外でも人気のアニメ作品は例を挙げればキリがない。が、そんな「世界一のアニメ大国」の座を、中国や韓国が脅かしつつあるというのだ。
根拠として指摘されるのは、近年、日本でアニメ制作を学んだ中国・韓国のクリエイターが帰国後、高いクオリティーの作品をつくっていることがある。また、世界に名だたる低賃金労働国家ニッポンの中でも、アニメ制作現場の過酷な労働環境は群を抜いており、ブラック労働に嫌気がさした技術者たちの「海外流出」が始まっていることも大きい。
このようなエピソードにデジャブを感じないか。そう、「日本の技術は世界一ィィ」とイキっていた家電、半導体などが、いつの間にやら自分たちよりも「下」に見ていた、中国や韓国のメーカーに追い抜かれてしまった、という負けパターンと酷似しているのだ。
もちろん、このような指摘は的外れだという意見もある。アニメのビジネスで大切なのは「国」ではなく、「ブランド」であり、海外の人気アニメランキングを見ても、日本のマンガ原作の作品が圧倒的な人気を誇っている。
中国や韓国もそれを模倣している段階なので、売り上げや市場規模を追い抜かされても、日本アニメの競争力・価値は揺らぐことがないというのだ。著作権ビジネスやコンテンツパワーの観点からも、日本が負けることはない、とおっしゃる専門家も少なくない。
「なるほどなあ」と納得する部分もあるが、個人的にはこのような意見が出てくる時点で逆に、ちょっと危ないものを感じている。
これまでの「負けた産業」を見ていくと、中国や韓国が右肩あがりで成長している事実を真摯(しんし)に受け入れず、「日本は負けない」「日本の優位性は揺らがない」と叫び続けながら衰退していく、というパターンが圧倒的に多いからだ。
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