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カインズに売られた「東急ハンズ」は、なぜライバル「ロフト」と差がついたのか:スピン経済の歩き方(6/7 ページ)
東急ハンズをこよなく愛する人々の間に激震が走った。ホームセンター大手のカインズが親会社の東急不動産ホールディングスから買収することを発表したからだ。東急ハンズが低迷した背景に何があるのかというと……。
ロフトとカインズの共通点
カインズという企業は、東急ハンズのような自分たちの品ぞろえやプロ意識という「こだわり」がそれほどない。むしろ、ロフトにも似た「しなやかさ」を感じる。それがうかがえるのがPBだ。東急ハンズのように「私たちは商品のプロです」というような気負いがなく、ロフトのように「たまたまいい商品見つけたので、相乗りしてみました」くらいのノリなのだ。
例えば、カインズはDIYツールなどで「Kumimoku」というPBがある。おしゃれなデザインの工具などがそろっているが、カインズが主役というよりも、コラボ先の老舗工具メーカーのベッセルやゼットソーの品質をアピールする。例えば、カインズのライフスタイルショップ「スタイルファクトリー」のある店舗ではこんな手書きポップが掲げられている。
『ゼットソー× Kumimoku 昭和18年創業以来 使う人に満足して頂ける製品づくりを社是に掲げ、徹底した品質管理に力を入れている確かなのこぎりブランド! ハンディのこぎり、マルチソーなどKumimokuシリーズで登場!』
このように自社の「こだわり」や「らしさ」などそっちのけで、「時代」や「トレンド」を柔軟に切り取っていくスタンスは、ロフトの「時の器」というコンセプトと近いものがある。
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