「DXを進めた意識はなかった」日産レンタカーが、すごいアプリを作れたワケ:きっかけは?(2/4 ページ)
「日産レンタカー」が公式スマホアプリを開発。ユーザーがレンタカーを借りる際、さまざまな手続きをスマホ上で完結できるようにした。アプリの開発背景、苦労話を聞いた。
岡本: 顧客体験の向上を目指したのが始まりでした。DXを進めた意識はなく、また今回、完全非対面で手続きを完結できるのがアプリの特徴ですが、コロナ禍になってこの形を模索したわけでもありません。
レンタカービジネスは、差別化が難しい業種です。扱う車種はどのブランドも差がなく、最後は値段勝負か顧客利便性に帰着します。その中で、顧客利便性を上げるために考えたのが、出発前の手続きをデジタル上でお客さまに行っていただく「セルフチェックイン」でした。
小林: 確かにあの手続きがなくなるだけで、顧客側は待ち時間も軽減できるので顧客利便性は上がりますよね。従業員としても貸し出しのオペレーションが簡略化されることで楽になるので、双方にメリットがあると思います。
岡本: そうですね。そこでまずは、ブラウザ上でセルフチェックインのシステムを開発した形です。
小林: 最初からデジタルの活用やDXが念頭にあったわけではなく、顧客体験の向上を突き詰めた結果、そこに行き着いたわけですよね。この視点はとても大事だと思っていて、例えばネットショップ開設のプラットフォーム「BASE」も、小売りの方がもっと簡単にネットショップを開設できないかという純粋な問いから始まり、結果的にそれがDXになったのだと思います。
今回も同じですよね。DXは、得てしてそれ自体が主目的になりがちですが、シンプルにユーザーと向き合って、顧客体験を上げる方法から始まったお話は、大きなヒントになるはずです。
岡本: 自分たちの仕事を一度抽象化して、必要なものといらないものを分けると、残すべき顧客体験や価値が見えてきます。レンタカーを借りるお客さまで、あの手続きをしたい方はほぼいないですよね。移動手段の確保がお客さまにとって最大の価値なので、それ以外の手続きは徹底して軽くした方が喜ばれます。
小林: こうしてプロジェクトが始まり、私たちも携わらせていただいたのですが、最初はブラウザのみのサービスでアプリ開発は想定していませんでしたよね。
岡本: はい。2種類のOSに対応し、頻繁なメジャーアップデートも必要になるので、コスト面で厳しいなと。ただ、ブラウザでは免許証の情報取得にハードルがあるなど、顧客体験向上に限界が出てきます。また、並行して「セルフライドゴー」のプロジェクトも進めていたのですが、これを実現するにもアプリが最適ということになり、ブラウザからアプリ開発へ舵を切りました。
「ソフトウェアに一生、完成形はない」という前提で開発
小林: 実際にやってみて、どんなところに苦労がありましたか。
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