電帳法の電子保存義務「2年猶予」で、企業の4割が対応延期
電子データで受け取った請求書などを電子の形で保存しなくてはいけないという電子保存義務を定めた改正電子帳簿保存法。施行直前の12月になって「罰則を2年間猶予する」ことが発表されたが、これにより企業の電帳法対応はどうなったのだろうか?
1月に施行となった改正電子帳簿保存法。焦点の1つは、電子データで受け取った請求書などを電子の形で保存しなくてはいけないという電子保存義務だ。国税庁が課す要件が厳しいこともあり、各所から異論が出、施行直前の12月になって「罰則を2年間猶予する」ことが発表された。
これにより企業の電帳法対応はどうなったのだろうか? ラクスが2021年12月16〜21日にかけて経理、財務、会計担当者に行った調査によると、それまで電子帳簿保存法対応の準備をしてきた企業の4割が、「2年猶予」の発表を受けて対応を延期したことが分かった。
認知は進んだが運用はわずか16%
全体としての電帳法対応状況はどうか。「電子帳簿保存法を知らない」と回答したのは全体の15.2%で、8割以上が電帳法を認知している。ところが、実際に対応できている企業は施行直前の12月時点でも、わずか16.4%にとどまった。
電帳法対応を具体的に検討しているのは33.8%、すでに運用中のところと合わせても約5割だ。残りは、「いずれは運用を検討したい」(23.9%)、「導入は見送った」(10.8%)とまだ後ろ向きの状況にある。
その理由は、対応方法がさまざまで複雑であることにある。受け取った電子請求書の保管方法について尋ねたところ、3割以上が「未定」「分からない」と答えている。猶予期間とはいえ法律は施行されており、電子保存義務があるにもかかわらず、企業側の混乱状況は続いている。
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