2015年7月27日以前の記事
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株主優待もデジタル化? 上場企業がプレミアム優待倶楽部を導入する“裏”の理由金融ディスラプション(2/3 ページ)

企業が株主に送る株主優待も、デジタル化が進みつつある。クオカードや商品券ではなく、ポイントを付与しネットにアクセスしてもらって好きな商品を選べる「プレミアム優待倶楽部」の導入企業は80社を超えた。SDGs的な観点から、優待のデジタル化に踏み切ったのかと最初は考えたのだが、実はここにはもっと深い理由があった。

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利用した株主にメールでコミュニケーション

 プレミアム優待倶楽部の利用の流れはこうだ。まず株主に、信託銀行からプレミアム優待倶楽部のお知らせが郵送で届く。株主は、ウィルズが運営するプレミアム優待倶楽部ポータルにアクセスし、メールアドレスだけでなく、生年月日や職業、家族構成などの追加情報を入力し会員登録する。すると、6000点にもおよぶ優待商品の中から、付与されたポイントを使って好きなものが選べるようになっている。


企業側から見たプレミアム優待倶楽部の機能

 株主が会員登録を終えたところから、本ツールの本領が発揮される。IR担当者側には「株主ポスト」という機能が用意され、株主向けにIR情報やセミナー案内、さらに新製品の発表情報などもメールで送れるようになっている。

 これまでは株主が企業の情報を知りたくても、IRのWebサイトにアクセスするかIR担当に電話するなどの方法しかなかった。企業側からどうしても連絡したければ、多大なコストをかけて郵送するしかなかったわけだ。「機関投資家と個人投資家には情報格差がある。これを是正したい。株主ポストを設置することで、個人にダイレクトに情報を送れるようになる」と杉本氏は思いを話す。

 さらに、ネットを使った株主総会サービスや、ブロックチェーンを使ったオンライン議決権行使の仕組みも用意している。優待は株主をデジタル化するための入り口であって、そこから先にさまざま用意しているIRサービスが、真の狙いというわけだ。

 プレミアム優待倶楽部を導入した企業では、70%がメールアドレスを登録しデジタル化した。株主の多くは年配層のため、果たして紙からデジタルへの切り替えを許容してくれるかという懸念を持つ企業もあったという。しかし結果的には、「驚異的な率」(杉本氏)がデジタル化に至っている。

優待の設計で株価対策

 企業側から見ると、プレミアム優待倶楽部のメリットは株主情報のデジタル化だけではない。株主優待をうまく使って、株価対策にも利用できる。

 例えば、直近で企業の悩みの種となっていたのは東証再編だ。一部上場の審査基準には、株主数2200人以上という要件があり、企業によってはこれをクリアするためにさまざまな施策を打つことになる。メジャーな手法は、優待としてクオカードを用意することだ。すると、売買最小単位である1単元の株主数が急激に増える。

 ところが今回のプライム市場への再編では基準が変わった。必要株主数は800人に減り、代わりに出来高と時価総額基準が重要になる。東証は、円滑な取引のために1日平均売買代金0.2億円以上を求めており、今度は企業は出来高をどうやって増やすかに頭を絞らなければいけなくなるわけだ。

 ここで再び優待が活躍する。1〜5単元には敢えて優待のポイントを付けず、10単元、20単元といった大きなボリュームのときに、最も優待利回りが高くなるように株主優待を設計するわけだ。大きな投資額を動かせる投資家を呼び込むことで、出来高だけでなく時価総額にも影響があるという。

 「高単元ゾーンを増やすためのポイント付与設計を行っている。クオカードに反応しやすいのは若年層だが、年配の富裕層ゾーンはあまりクオカードに反応しない。それよりも1万円の松阪牛に反応する」(杉本氏)

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