「C+pod」で考える、超小型モビリティの仕様はどこで誤ったのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
昨年末の記事で、トヨタの「C+pod」について、限り無く全否定に近い評価をした。試乗する前に開発者とも話しているので、当人の顔が思い浮かんで、非常に気は重かったが、とはいえ、読者に本当のことを伝えないなら原稿を書く意味がないので、そこはもう正直に忖度(そんたく)なく書かせてもらった。
パーソナルモビリティの将来設計
では、パーソナルモビリティの将来はどう設計されるべきだったのだろうか? 今更言っても詮無いことかもしれないが、ちょっとそこを整理してみたい。
まず我々が受け入れるべきは「われわれがすでに持っている手段は何か?」というリソースの点検である。マーケットが支持した結果であるそのピースを、今更無理に変えようとしてもできない。それを前提に、今不足している隙間を埋めるべく、いくつかのピースごとに求められる役割を変える必要がある。何か一つのハードに何でもかんでもマルチロールに詰め込もうという考えがおかしい。ましてや安価な超小型モビリティの領域の話なのだ。
第一にカウントすべきは軽自動車である。すでに何度か書いているが、90万円前後で買える軽のスタンダードモデルは、その価格でありながら、衝突安全基準をクリアし、衝突軽減ブレーキも横滑り制御機能も備え(ほぼ全てがFFでリスクが低いのでTRCは不要)、さらに6エアバッグという、レベルの高い安全装備で、高速道路の走行もOK。にもかかわらず、WLTCでリッター25キロ走る。
ライフサイクルアセスメント(LCA)で見た時に、これを超える電気自動車(BEV)は恐らく世界中のどこにも存在しないだろう。ちなみに現時点で誰もが納得するLCAの計算方法は存在しないが、にしても一定の公平性を担保しつつ、この辺りの軽自動車を凌駕(りょうが)できるクルマは今後も出て来ないだろう。
ということで、冷静な目で再評価すれば、本来、軽自動車は世界の至宝である。カーボンニュートラル時代に向けて世界にアピールすべき、最強モビリティの一つである。なので、まずはこの軽自動車を四輪モビリティの最前線かつボトムラインとして扱いたい。
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