逆境のマツダ 大型FR導入で息を吹き返せるか?:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(1/3 ページ)
今年、目の離せないメーカーがあります。それがマツダです。実のところ、コロナ禍でのマツダのビジネスは散々なものでした。しかし、歴史を振り返れば、マツダは、これまで何度も、もっと辛い状況を耐え、そして、そこから復活してきたメーカーでもあります。
今年、目の離せないメーカーがあります。それがマツダです。
実のところ、コロナ禍でのマツダのビジネスは散々なものでした。2021年3月期の決算を見ると、グローバルの販売台数は前年比マイナス9%の128万7000台。当期純利益はマイナス317億円という大赤字です。20年の前半は、さらに悪く、最悪900億円の損失になるか? と思われるほど調子が悪く、300億円程度のマイナスで済んで、まだ良かったというほどです。
しかし、歴史を振り返れば、マツダは、これまで何度も、もっと辛い状況を耐え、そして、そこから復活してきたメーカーでもあります。
原爆、ロータリー、バブル崩壊……
まず、太平洋戦争の最後に、マツダのある広島の街は、原子爆弾によって焼き払われました。戦後の高度経済成長期を経て、1967年代には、世界でただ一社、ロータリー・エンジンを実用化。しかし、70年代のオイルショックによって、ロータリー・エンジンは「燃費が悪い」と見られ一気に経営が悪化しました。数千人の社員を全国のディーラーに送るなどの再建策も行われました。
その後、日本経済は80年代の好景気、いわゆるバブル期を迎えます。それをチャンスと見たマツダは、一気に販売チャンネルを5つに増やす計画のもとに膨大な数の新型車を投入。ところが、これもバブル崩壊と共に夢と消えてしまいます。
このマツダの窮地を救ったのがフォードでした。その後、90年代後半から2000年代にかけて、マツダはフォードの一員として成長します。しかし、やっぱりマツダに、またも危機が訪れます。それが08年のリーマンショックでした。なんと、マツダの08年の決算は、715億円の損失。翌09年も500億円の損失。2年連続の大赤字で、倒産が噂されるほどの辛い時期を送っていたのです。
でも、そんな逆境をマツダは克服しました。それが11年に発表した初代「CX-5」からスタートする新世代商品群です。新世代技術「スカイアクティブ」と「魂動デザイン」、そして「人馬一体の走り」を特徴とする新世代商品群によって、マツダは息を吹き返します。これらの新世代商品群の評判は非常に高く、日本カー・オブ・ザ・イヤーには、12年発売の初代「CX-5」をはじめ、14年の「デミオ」、15年の「ロードスター」が選定されています。
そうした逆境から復活し、さらなる高みを目指すというのがマツダの歴史と言えるでしょう。
関連記事
- ソニーも参入 各社からEV出そろう2022年、消費者は本当にEVを選ぶ?
22年は、これまで以上に「EV」に注目の年となることは間違いありません。なぜなら、22年は市場に販売できるEVがそろう年になるからです。 - 2021年の自動車販売隠れトレンド、箱型&スライドドア 5年前のモデルがランキング上位に
今年は「ヤリス」の年だったと言えるでしょう。では、今年のトレンドは何だったのでしょうか? 表面的に見えるのはSUVです。とはいえ、実際に売れているクルマを並べてみると、また違ったトレンドが見えてきました。 - 今年一番売れたクルマは? ビッグヒットの裏にあるカラクリ
2021年がもうすぐ終わりになろうとしています。この原稿を手掛ける12月上旬では、まだ1年間の集計は出ていませんが、今年のベストセラーカーは、ぼぼ決まりでしょう。それは、トヨタの「ヤリス」です。しかし、今回のヤリスのビッグヒットには、あるカラクリがありました。 - スバルは、どこで儲けている? 国内もASEANも中国も欧州でも売れてない
小さなメーカーですが、他にないキラリと光る優れた技術を持っているというのがSUBARU。しかし、どれだけSUBARU車が売れているかといえば、国内ではトヨタの10分の1。しかもASEANも中国も欧州でも、ぜんぜん売れていないのです。では、どこでSUBARUは儲(もう)けているのでしょうか? - 実は日本で一番に売れている「メルセデス・ベンツ」 高級車の象徴はなぜ輸入車ナンバー1に至ったのか?
今、日本で最も数多く売れている輸入車は何かといえば、それは「メルセデス・ベンツ」です。しかし、メルセデス・ベンツが日本で一番多く売れるブランドになったのは、ここ最近の話。かつてのメルセデス・ベンツは「高級車の象徴」であり、販売される数もそれほど多いものではありませんでした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.