逆境のマツダ 大型FR導入で息を吹き返せるか?:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)
今年、目の離せないメーカーがあります。それがマツダです。実のところ、コロナ禍でのマツダのビジネスは散々なものでした。しかし、歴史を振り返れば、マツダは、これまで何度も、もっと辛い状況を耐え、そして、そこから復活してきたメーカーでもあります。
力を溜めたマツダが飛躍する年
FRプラットフォームのラージ商品群は、これまでのマツダになかった大型車のジャンルとなります。当然、価格も高めとなりますから、うまい具合に売れるようであれば、マツダの経営もぐっと楽になることでしょう。そして、お金ができれば、開発費への投資も増やすことができ、その結果、よいクルマも生まれやすくなり、よりたくさんのクルマが売れるようになるでしょう。そんな良い循環が生まれるかどうかが、今年投入される新型車にかかっているのです。
20年と21年にマツダが投入した新型車は「MX-30」と、その派生EVである「MX-30 EV MODEL」だけでした。それが、今年から来年にかけてはラージ商品群という、まったくの新規モデルが投入されるのです。つまり、22年はマツダにとっては、非常に重要な年ということになります。
ちなみに、21年末の12月に「ロードスター」の商品改良がありました。「ロードスター」の本質を追求する軽さを際立たせた新グレード「990S」の追加をはじめ、走行性能を高める新技術も採用しています。「ロードスター」は、それほど数多く売れるクルマではありませんが、マツダにとっては「人馬一体の走り」を象徴する存在です。そのモデルが売れれば、新型モデルを数多く投入するマツダにとって幸先の良いことになるはず。
コロナ禍のもと、じっとうずくまるように力を溜めたマツダが飛躍する年。それが22年ではないでしょうか。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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