【自動車メーカー7社決算】ものづくりのターニングポイントがやってきた:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)
内自動車メーカーの第3四半期決算が出揃った。しかし、今年の第3四半期決算は少し趣が違う。どう違うかを解説する前に、まず第2四半期までの状況を振り返っておこう。
国内自動車メーカーの第3四半期決算が出揃った。過去にも書いたことがあるが、本来第3四半期は通期の75%を経過した時点での成績であり、当然かなり高い精度で、通期決算の結果を予測できる。5月に発表される通期決算の着地点を第3四半期決算で見通して、少しでも早く投資判断を行うために重要なデータである。
しかし、今年の第3四半期決算は少し趣が違う。どう違うかを解説する前に、まず第2四半期までの状況を振り返っておこう。
ほとんどメーカーが増益だった上期決済
振り返ると今年の半期決算(第2四半期決算)までは、各社とも非常に好調だった。新興国で発生したコロナ禍による部品不足への対応が、あくまでも結果論ではあるがうまく機能して、全体としては減収ながら、ほとんどのメーカーが大きな増益を果たしたからだ。
基本的な構造としては、需要はあまり下がらなかったのに対して、部品不足によって生産能力が大いに制限され、需要に供給が追いつかない状態が発生したのである。
特に北米における在庫不足がプラスに作用した。受注生産が中心の日本と異なり、北米では一般的に、仕入れ販売型だ。ディーラーが売れそうな車種とグレードを予め見繕ってメーカーに注文し、そうやって確保した在庫を、来店した顧客が買って帰る。スーパーマーケットや個人商店と同じように売れ筋を読んで仕入れるビジネスである。だから場合によっては「このクルマ、今日買って乗って帰るわ」みたいな買い方ができる。
部品不足で生産数が限られる中、自動車メーカーは単価の高いクルマを優先で生産することにした。部品供給の制約で作れる台数が限られている以上、誰が考えても安いクルマを優先する意味はないので当然だ。
だから、この部品不足状況下で、ディーラーがあらかじめ仕入れるシステムだと、安いグレードが店頭に並ばなくなる。来店客は高いグレードを買うしかない。これで客単価というか台当たり利益率が向上した。
さらに品薄ならば値引きの必要がないので、販売奨励金(インセンティブ)が激減する。店頭で顧客がクルマの争奪戦を演じている中で、さらに来店を促す宣伝広告を打ってもむしろトラブルの元なので、宣伝広告費も大幅に削減できた。さらに新車を買いそびれた顧客が程度の良い中古車に流れる。こちらは完全に相場マーケットなので、中古車はどんどん値上がりして、こちらの利益も厚くなる。
この流れは北米マーケットで顕著だったのだが、品不足というベースラインは世界中どこでも変わらず、全体としても似たような流れでビジネスが進行したのである。
こうした効果によって、国内自動車メーカー各社の上半期決算は概ね好調で、台数を落としながらもむしろ経営の強靱(きょうじん)さを示した形になった。その構造が変わったのが第3四半期なのだ。
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