なぜ群馬に“謎コンビニ”ができたのか ゼンショー「実験店舗」の正体:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
ゼンショーHDが群馬県内で展開しているコンビニ「さくらみくら便利店」が話題になっている。コンビニ業界は寡占化が進んでいるのに、このタイミングで参入して存在感を示すことができるのだろうか。
テークアウトが収益の柱
まず、(1)の「外食大手は『テークアウト需要』の取り込みに活路を見出している」はニュースになっているのでご存じの方も多いだろう。コロナ禍で大打撃を受けた外食の中でも、回復しているのは、マクドナルドや丸亀製麺のトリドールホールディングスなどテークアウトに力を入れている企業が圧倒的に多い。ゼンショーHDもその1社である。
では、ゼンショーHDの「持ち帰り事業」を牽引したのはどこかというと、コロナ禍でも堅調な「すき家」はもちろんだが、実は筆頭は(2)の「スーパー内の持ち帰り寿司」である。
『米国やカナダで展開する持ち帰りすしなどが業績回復をけん引する。ゼンショHDは18年に同事業を展開するアドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(AFC)を傘下に入れた。AFCの大半の店舗はスーパー内にフランチャイズとして展開しており、新型コロナの「巣ごもり」消費を追い風に、「中食」需要を取り込んでいる』(日本経済新聞 2022年2月5日)
北米、オーストラリアで4000店舗以上を展開しているこのAFCを子会社にしたのはコロナ前だが、それがこのような時代になったことで大ブレイク、今や海外事業の収益の柱となっているのだ。
さて、そこでゼンショーHDの経営陣になったつもりで考えていただきたい。やれ変異株だ、それ医療崩壊だ、とこれから先も外食にとってテークアウトが収益の柱になる可能性が高い。米国では、スーパー内で展開する「持ち帰り専門店」が思いのほか好調だ。ならば、これと同じようなことを日本でも仕掛けようと思うのは当然だろう。
ただ、日本のスーパーには店内で調理した総菜や、焼きたてのパンやピザなど既にさまざまな「持ち帰り食品」が入っている。鮮魚売り場にはクオリティーの高い「パック寿司」もあるし、郊外の大型店ならば、「すき家」や「なか卯」も入るようなフードコートを併設しているケースも少なくない。
そのように事業環境を見ていくと、実は「持ち帰り専門店」がほとんど参入していないブルーオーシャンがあることに気付くはずだ。スーパーのように生活必需品を買い求める人が多く訪れながらも、外食の持ち帰りがほとんど立ち入っていない未開の地――。そう、コンビニである。
日本のコンビニは弁当や総菜が多種多様にそろっているが、それらは基本的に「つくりおき」だ。注文を受けてから、その場で調理をする「できたて弁当」「できたてのラーメンやうどん」はない。そこを大手ビッグ3と組んで、ゼンショーHDが担うことができれば、非常に大きな国内の「中食」需要を取り込むことができる。
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