五輪終了後も不安が残る「中国リスク」 どうすればいいのか?:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
五輪後、中国とビジネスで関わっていく際に起こりうる「中国リスク」を考察する。ビジネスパーソンが中国出張時に注意すべきこととは――。
中国ではいつスパイ工作に巻き込まれるか分からない
現在、中国では邦人10人以上がスパイなどの容疑で捕まっているといわれている。仕事などで行くビジネスパーソンは誰でも同じような容疑で捕まるリスクがある。強権的な国だけに、当局のサジ加減ひとつでどんな扱いを受けるか分からない。
そこでわれわれが注意すべきことがある。1つは、写真撮影である。中国では公共の場所でむやみに写真を撮るのは控えるべきだろう。観光地など、周囲の観光客などが撮影をしていれば問題はないだろうが、街角であっても写真撮影禁止の場所が少なくない。
空港や公的機関、政府系建物、軍事関連施設なども注意が必要で、どこにどんな建物があるかも分からない。まさに写真が見つかれば「スパイ容疑」として捕まる可能性がある。
貴重な書物や文書などにアクセスしたり保持したりすることも、スパイ容疑などに問われる可能性があるので注意したほうがいい。特に中国と外交的に揉(も)めた国は、見せしめのように出身者がスパイ容疑で捕まるケースが起きている(例えば最近なら、カナダ人やオーストラリア人)。そういうタイミングも注視しておいたほうがいいだろう。
「スパイなんて自分とは関係ない」ビジネスパーソンは多いと思うが、ここまで見てきた通り、中国ではいつスパイによる情報収集・スパイ工作に巻き込まれるのか分からない。それはサイバー空間上でも実世界でも同じ。性善説は通用しないので、会社やビジネスパーソンは自覚を持つ必要がある。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
関連記事
- 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - なぜ飛行機の“中古”部品が売れているのか JALのカプセルトイが7時間で完売
飛行機の部品をカプセルトイで販売したところ、航空ファンを中心に話題になっていることをご存じだろうか。JALの整備士が手掛けていて、2〜3日で完売。なぜ人気を集めているのか、担当者に話を聞いたところ……。 - 飛行機に“最後に乗る”のはどんな人か 羽田空港を分析
飛行機に乗るとき「できれば早く乗りたい」という人もいれば、「できれば最後に乗りたい」という人もいる。搭乗口で最後に手続きを済ませているのはどのような人なのか。羽田空港で飛行機の遅延分析をされている、JALの担当者に話を聞いたところ……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.