「そごう・西武」の売却騒動は“必然”だった!? 成功する「企業コラボ」の法則に迫る:業種と業態の関係を考える(1/4 ページ)
セブン&アイ・ホールディングスが傘下のそごう・西武の売却に向けて動いている。筆者は、「企業コラボ」の視点から今回の出来事は“必然”だったと指摘する。どういうことかというと……。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)が傘下のそごう・西武の売却に動き始めました。
2006年に2000億超で買収したそごう・西武(当時はミレニアムリテイリング)をグループ化することで、さまざまな相乗効果を期待していたはずです。
同じ業種同士のコラボで、再生できる自信があったからこその買収だったはずです。しかし、結果的に同社から切り離されようとしています。
百貨店市場の縮小や、日本から大衆が消えたという時流変化などを踏まえると、企業コラボのやり方も考え直さないといけないのではないかと私は感じています。
企業コラボにはどんな形があるのか。成功するコラボとは何か。小売り・サービス業のコンサルティングを30年間続けてきたムガマエ株式会社代表の岩崎剛幸が分析していきます。
そもそも一緒になったことが間違い?
日本の百貨店はこの20年以上、合併・統合の嵐の中にいます。
百貨店業界は、大手百貨店同士の経営統合という企業コラボを実施してきた業界です。セブン&アイHDのようなコンビニ、GMSを主体とする企業がそごう・西武を買収したことが、むしろレアケースともいえます。そもそも百貨店が小売りの王様だった時代は、GMSやコンビニを展開する企業が百貨店の上に立つことは「あり得ない」ことだったからです。
それだけ百貨店という業態はなかなか「外から手を出しづらい業態」だともいえるかもしれません。
日本の百貨店の売り上げを2000年からの推移で見ると、まさに右肩下がりであることが分かります。
21年はV字回復していますが、20年の伸び率が19年比でマイナス27%と大きく落ちていますので、回復しているとは言い難い状況です。
この数字と、百貨店の売り上げがピークだった1991年以降の百貨店業界を取り巻く状況を並べてみると、興味深い内容が見て取れます。
日本の百貨店における売上高のピークは91年の9兆7000億円(268店舗)です。
2000年になると8兆円台にまで下がり始めました。この数字が06年に7兆円台になった途端に百貨店各社の統合などが始まります。
そして、百貨店売り上げが6兆円台になると全国の地方百貨店が次々と閉鎖を発表し始めました。理由は単店売り上げが激減していったからです。1店舗当たりの売り上げで見てみると、百貨店の苦境がよく分かります。
百貨店1店舗当たりの売上高は、この30年間で362億円から234億円へと激減しています。百貨店の平均粗利率23〜25%(そごう・西武の21年2月期粗利率は19.1%)程度です。1店舗当たり50億円以内に販管費を抑えなければ営業利益は限りなくゼロ、あるいは赤字になってしまいます。経営数字を客観的に見たら、旧来型の百貨店体質では生き残れないことは明白です。特にセブン&アイHDのようなコンビニや金融事業などの高収益事業を持つ企業の中では百貨店事業はお荷物と映っていたことでしょう。
アクティビストからは「(企業価値を破壊している)非コンビニ小売業の代替的な所有構造の模索」(バリューアクト・キャピタル社)を迫られているようです。百貨店事業の売却をセブン&アイHD経営陣に言及したこともやむを得ない話でもあるのです。
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