金利ショックで膨れ上がる債務コスト、最大の影響は日本:フィデリティ・グローバル・ビュー
金融引き締め政策はすでに膨れ上がった債務返済コストを一段と増やす恐れがあり、インフレとの戦いのために利上げを実施しようとしている中央銀行が巻き添えを食ってしまう危険性があります。
先進国のインフレ率はピークに近づいている可能性があります。しかし、2021年のパンデミックによるインフレ圧力が一過性であることが証明されない限り、議論の余地はあるでしょう。それでは、中央銀行がパンチボウル(お酒が入ったボウル)を取り上げることのマイナス面は何でしょうか。
今回は、金利上昇という“ショック”が主要国の債務返済コストに与え得る影響について考察します。
金融政策に起因する世界経済の減速リスク
インフレ率は予想を超える上昇が続いており、まだピークに達した兆しはありません。2月10日に発表された2022年1月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比での上昇率が7.5%と、40年ぶりの高水準となりました。しかし、一部の人が予想するように、主要国のインフレ率が短期的に頭打ちになったとしても、ここからの調整は長く、身動きのとりづらい軌道をたどることになりそうです。
市場と世界経済の大部分につきまとう根本的な懸念は、成長とインフレの微妙なバランスを考慮しなければならない難しい状況の中、政策当局が金融政策の引き締め度合いを甘くしたり、きつくしすぎたりすることです。また、パンデミックの後では、多額の債務負担が政策余地を狭めることにもなります。
米国を例にとってみます。パンデミック対策で膨らんだ米国債務は、2月上旬に初めて30兆ドルを超え、国内総生産(GDP)の130%近くを占めることになりました。この連邦債務の山と数十年にもわたる高インフレが相まって、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする主要中央銀行があまりに積極的に金融引き締めに動けば、金融政策に起因する世界経済の減速につながる可能性があります。
金利上昇の悪影響が大きい日本の財政
今回のチャートでは、金融引き締めによる債務コストへの影響を示しています。フィデリティの試算では、米国の政策金利が200ベーシスポイント(2%)上昇した場合、GDPの2.4%に相当する規模の追加的な債務コストが発生します。日本で同じように国債利回りが上昇した場合は、GDP比で4.5%ほどの債務負担増となります。
政策当局にとって、このトレードオフは両面で痛みを伴います。過度な金融引き締めは、債務の持続可能性の問題を誘発するリスクがあります。一方で引き締めのペースを緩めれば、マクロ的な視点で見た”行き過ぎ”を長引かせる可能性があります。このバランスをうまくとることが、足元の景気サイクルで政策当局が直面する最大の課題であることは間違いないでしょう。
Chuin Wei Yap
Fidelity International Global Macro and Asset Allocation Team
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