ロシアからの石油や天然ガスが途絶えても、米国のシェールオイルがカバーできる?:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
ロシアによるウクライナ侵攻が続いていることで、原油価格が急上昇している。中東の産油国が集うOPECは、今回のウクライナ危機によって原油の増産を検討し始めているが、それ以外にも原油の供給を増強させようという動きがある。それは米国のシェールオイル業界だ。
より効率の高いエネルギー利用と多様性が重要
なお、原油価格が上昇することで生じるメリットも無いわけではない。その代表的な例が、代替燃料の実用化が早まる、ということだ。
例えばバイオ燃料の価格は、取り組みが始まった20年前から15年前あたりまでは、単価はガソリンの10倍といわれ、とても普及が望めそうなものではなかった。しかしそこから研究開発が進み、7、8年前あたりからは微細藻類の培養による油の精製でガソリンの3、4倍のコストでの実現が見えてきたといわれている。
太古から存在する植物の一種である微細藻類。沼や池などで発生するアオコも藻が大量発生した現象だ。地球上に2000種類を超える種が存在するといわれており、その中でも細胞内に油を溜め込む種がいくつも発見されている。それぞれに特徴があり、バイオ燃料に最適な種と培養方法を巡って研究開発が続けられている
非常に安定した物質である二酸化炭素を一酸化炭素にして、酸素ではなく水素と結び付けて、液化させるという合成燃料より、微細藻類由来の油を精製するバイオ燃料の方がはるかに効率が良い。水素が本格的に使える原料となるのは、再生可能エネルギーによる発電が主力となり、その電力で水を電気分解して取り出す水素が使えるようになってからだ。
一方の微細藻類によるバイオ燃料を普及させるには広大な培養池が必要であり、日本国内で必要量を生産することは難しい。しかし海洋性の藻類であれば海上で培養することも可能となるし、海外の広大な国土を利用して培養する手もある。
しかもガソリンの3、4倍というエネルギーコストが実用化への障壁の1つなのだから、ガソリンの価格が高騰すれば、その差は自然に縮まってくる。その上で、量産化によりコストダウンが進む。そして普及することで増産体制となりスケールメリットが価格をさらに引き下げることも期待できるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
トヨタがEVメーカーになることを待望するヒトに欠けている視点と残念な思想
トヨタのバッテリーEV戦略に関する説明会では、トヨタの底力を見せたのは間違いない。しかし、あれを見て「トヨタもBEVに注力するのか」と思った人は多かったようだ。そう思わせるのが目的だとはいえ、この見方はあまりにも単純すぎる。
なぜクルマには半導体が必要なのか? どうなるクルマと半導体のミライ
改めていうまでもないのだが、EVやハイブリッド車は当然として、純エンジン車にとっても半導体は欠かせない部品だ。それでもこの半導体というモノ自体が何なのか、今一つクリアになっていない。さらに深層へと迫ろう。
なぜクルマのボディはスチール製なのか 軽量化に向けて樹脂化が進まない理由
高級車などは、そのプレミアム性のためや、大型サイズゆえ重くなりがちな車重を軽減するためにアルミ合金やCFRPを併用することも増えているが、構造材としてむしろ鉄は見直されつつあるのだ。
なぜクルマのホイールは大径化していくのか インチアップのメリットとホイールのミライ
振り返ればこれまでの30年間、全体的にクルマのホイール径はサイズアップされる傾向にあった。そのきっかけとなったのは、低扁平率なタイヤの登場だった。なぜタイヤは低扁平化し、ホイールは大径化するのだろうか?
スタッドレスタイヤはどうして氷上でもグリップするのか
雪道ではスタッドレスタイヤやタイヤチェーンなどの装備が欠かせない。スタッドレスタイヤに履き替えていれば、大抵の氷雪路では問題なく走行できる。しかし、そもそもスタッドレスはなぜ氷雪路でも走行できるのか、考えたことがあるだろうか。
