ロシアからの石油や天然ガスが途絶えても、米国のシェールオイルがカバーできる?:高根英幸 「クルマのミライ」(4/4 ページ)
ロシアによるウクライナ侵攻が続いていることで、原油価格が急上昇している。中東の産油国が集うOPECは、今回のウクライナ危機によって原油の増産を検討し始めているが、それ以外にも原油の供給を増強させようという動きがある。それは米国のシェールオイル業界だ。
原油価格の上昇が加速させる、新たなビジネス
代替燃料だけでなく、原油価格が上昇することで新たなビジネスが創成される可能性もある。プラスチックのより高度なリサイクルや代替材料の開発は急速に進むことだろう。それらも課題はコストであるとするなら、原油価格の上昇は追い風とも言える。
クルマがEV一辺倒では実現不可能なように、エネルギーも原料素材も多様性を求めていくことが重要だ。化石燃料だけでなく、太陽光に偏り過ぎることもなく、植物由来の原料や自然エネルギーも柔軟に幅広く活用すべきなのだ。それは地政学上のリスクだけでなく、災害リスクや環境への影響を抑えるためにもつながる。
それにしても恐ろしいのは、地球の温暖化対策や環境保全といった目標が、たった一人の暴君の言動で木端微塵に狂わされようとしていることだ。ロシアによるウクライナ侵攻は、一刻も早く止めなければならない。その上で、エネルギー政策の転換を本気で考えなければならない事態に直面している。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
関連記事
- トヨタがEVメーカーになることを待望するヒトに欠けている視点と残念な思想
トヨタのバッテリーEV戦略に関する説明会では、トヨタの底力を見せたのは間違いない。しかし、あれを見て「トヨタもBEVに注力するのか」と思った人は多かったようだ。そう思わせるのが目的だとはいえ、この見方はあまりにも単純すぎる。 - なぜクルマには半導体が必要なのか? どうなるクルマと半導体のミライ
改めていうまでもないのだが、EVやハイブリッド車は当然として、純エンジン車にとっても半導体は欠かせない部品だ。それでもこの半導体というモノ自体が何なのか、今一つクリアになっていない。さらに深層へと迫ろう。 - なぜクルマのボディはスチール製なのか 軽量化に向けて樹脂化が進まない理由
高級車などは、そのプレミアム性のためや、大型サイズゆえ重くなりがちな車重を軽減するためにアルミ合金やCFRPを併用することも増えているが、構造材としてむしろ鉄は見直されつつあるのだ。 - なぜクルマのホイールは大径化していくのか インチアップのメリットとホイールのミライ
振り返ればこれまでの30年間、全体的にクルマのホイール径はサイズアップされる傾向にあった。そのきっかけとなったのは、低扁平率なタイヤの登場だった。なぜタイヤは低扁平化し、ホイールは大径化するのだろうか? - スタッドレスタイヤはどうして氷上でもグリップするのか
雪道ではスタッドレスタイヤやタイヤチェーンなどの装備が欠かせない。スタッドレスタイヤに履き替えていれば、大抵の氷雪路では問題なく走行できる。しかし、そもそもスタッドレスはなぜ氷雪路でも走行できるのか、考えたことがあるだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.