でんぱ組.inc、虹コンの生みの親「もふくちゃん」に聞くディアステージ立ち上げ秘話:起業しか生きる道がなかった(4/5 ページ)
「でんぱ組.inc」「虹のコンキスタドール」をプロデュースしているのが音楽プロデューサーの「もふくちゃん」こと、福嶋麻衣子さんだ。インタビュー前編では、福嶋さんの学生時代から就職、ライブ&バー「秋葉原ディアステージ」の立ち上げから、「でんぱ組.inc」を生み出すに至った経緯を聞く。
でんぱ組.incの古川未鈴が現れた
――資金調達もできました。それから「でんぱ組.inc」のプロデュースが始まるわけですね?
DEMPAビルもできて、ディアステージというお店もできた頃、「アイドルやりたい!」って子が現れるんです。今も、「でんぱ組.inc」のメンバーで活動する古川未鈴です。
あまりに「アイドルやりたい!」って言うので、考えたら私もアイドルは好きだったので、最後は「じゃあ、やろう、やろう」って感じですね。でも、アイドルって何からやるんだろう、曲はどうするんだろう、衣装は……。誰もアイドルの作り方、やり方を知らなかった(笑)。
――そんな状態で始まった「でんぱ組.inc」がどうなっていくかは興味深いです。
何も分からない中、アイドルのまね事を始めた感じでした。いろんな曲を聴いて、作曲者にコンタクトし、衣装もこの人にお願いしようとやっているうちに、だんだんいろんな人が集まってきました。「でんぱ組.inc」という箱もできて、曲も出しました。でも1年ほど何もできなかった状態でした。
そんな状況にあってお声がけいただいたのが、アニソン音楽レーベル「Lantis(ランティス)」さんです。その頃のランティスさんは、『らき☆すた』や『涼宮ハルヒ』などの大ヒットで相当多忙だったはずです。音楽プロデューサーの佐藤純之介さんに担当いただき、「ラブライブ!」をプロデュースした木皿陽平さんにもお世話になりました。まだまだ小さかった「でんぱ組.inc」をよく取り上げてくれたなと思います。
「でんぱ組.inc」のメンバーも、『らき☆すた』や『涼宮ハルヒ』といったアニメ、アニソンに憧れて秋葉原にきた子たちなので、憧れのランティスさんでCDを出せると、みんな喜びました。これが、「でんぱ組.inc」を本気でやろうと思ったきっかけです。
――そこから、より本格的にアイドルを目指すわけですか?
既にいろいろなアイドルが活動していましたが、私たちは、別の島にいる感覚を持っていました。私たちの気持ちは、もう少しアニソン、サブカル寄りだったと思います。ただ、「でんぱ組.inc」のアートワークやデザインに、秋葉原によくあるいわゆる「萌え絵」のようなものを打ち出すのは絶対に違うと思っていました。
私たちは、違う文化を持ち込もう、アート界隈の文化を秋葉原に持ち込んだら絶対にびっくりすると思ったんです。実際、当時の「でんぱ組.inc」は、現代美術の人たちとのコラボもしていました。
――この時、藝大時代の福嶋さんの思いが仕事にシンクロしたのですね。周りの反応はどうでしたか?
憧れだった現代美術家の村上隆さんの臭覚は鋭くて、「もふくちゃん、秋葉原でムービー撮ろう!」となり、監督には「スパイダーマン」を撮っているマックG、同作にも出演しているキルステン・ダンストも来て、謎の映像を撮りました。その映像には、「でんぱ組.inc」の古川未鈴や相沢梨紗も出演しています。
そのあたりから、アート界隈で「今、秋葉原で何か起こっているの?」というざわつきが起こって、蜷川実花さんにも興味を持ってもらい、まだ「地下アイドル」だった「でんぱ組.inc」を撮ってくださいました。
――アイドルとはちょっと変わった立ち位置からメジャーデビューを果たすわけですね?
「地下アイドルです」という感じに撮られた写真でも、勘のいい人はアートを感じ、熱量を感じたと思います。
当時、まだ「クールジャパン」という言葉が出る前だったのですが、ちょうどそのムードが作られる前、みんなの価値観が変わる狭間にいたように思います。
11年3月11日地震が起こる直前でした。トイズファクトリーの社長さんがご来社されて、その日のうちに「でんぱ組.inc」のデビュー契約を結んでくれました。今も忘れることができません。そこから「でんぱ組.inc」の活動が広く世に知られるようになっていったのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
BABYMETALのプロデューサー「KOBAMETAL」に聞くライブエンタメビジネスの展望
BABYMETALをプロデュースしたKOBAMETALさんにコロナ禍のライブ・エンタテインメントビジネスの展望を聞いた。
4年連続の赤字だったアイドルフェス 「@JAM」の仕掛け人は、いかにして黒字化させたのか?
ポップカルチャーフェス「@JAM」の総合プロデューサーを務める橋元恵一さんに、当初は赤字続きだったフェスをいかにして黒字化させたのかを聞いた。
高校生が選ぶ好きなYouTubeチャンネル 2位「コムドット」、1位は?
調査対象は高校生(15〜18歳・男女比は男子5:女子5)。有効回答数は200名分。
「この企業に勤める人と結婚したい」ランキング トヨタ自動車、任天堂をおさえての1位は?
「この企業に勤める人と結婚したいランキング調査」。1位は「地方公務員」(28.6%)だった。
音楽ポップスの興行規模ランキング 3位「AAA」、2位「EXILE TRIBE」、1位は?
ぴあ総研は、2021年の音楽ポップスの興行規模に関するランキングを公表した。その結果1位は、デビュー10周年を迎えてドームツアーを開催した「三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」だった。
「日本でリメークしてほしい韓国ドラマ」 4位『愛の不時着』、2位『梨泰院クラス』を抑えて1位になったのは?
韓国ドラマが好きな男女405人を対象に「日本でリメークしてほしい韓国ドラマ」についてアンケート調査を実施した。その結果、1位は『キム秘書はいったい、なぜ?』(52票)だった。
アイドルオタクがライブで魅力を感じる瞬間 2位「生歌が聞ける」、1位は?
アイドルオタクが「インディーズアイドルライブで魅力を感じる瞬間」についての調査。
