入院中に有休を使い切った社員 会社が立て替えた住民税を踏み倒して退職……どうすればよかった?:社労士・井口克己の労務Q&A(1/2 ページ)
入院中に有休を使い切った社員。無給期間中の社会保険料や住民税などは会社で立て替えていたが、そのまま退職。退職後の請求にも応じなかった。どうすればよかった?
連載:社労士・井口克己の労務Q&A
労働法に詳しい株式会社Works Human Intelligenceの社労士・井口克己氏が、人事労務担当の素朴な疑問を解決します。
Q: 現在、病気で入院中の社員がいます。入院予定期間は3カ月程度で、その後は職場に復帰できる見込みです。年次有給休暇を消化し、その後は病気休暇とします。病気休暇は無給のため、2カ月ほど給与が0円になる予定です。
実は数年前にも、今回と同じように長期入院した社員がいました。無給期間中の社会保険料や住民税などは会社で立て替えていたのですが、そのまま退職となりました。退職後、無給期間中に会社が立て替えた分を請求しましたが、お金がないと言い支払ってもらえませんでした。今回はそうした事態を避けたいのですが、どのようにしたらよいでしょうか。
A: 立て替え分は毎月会社の口座に振り込ませてください。振り込みがない場合は健康保険の傷病手当金から相殺します。これらの手続きについて無給期間に入る前に本人に詳しく説明し、書面による同意書を作成してください。
休職中に発生する控除とその扱い
給与からの控除は、下記の2つの条件の組み合わせで決まります。
◆給与額と連動しているか
- (1)給与の額に応じて計算される「給与連動型」
- (2)給与の額に関係なく定額で計算される「給与非連動型」
◆徴収は義務か任意か
- (A)法令によって会社に徴収義務がある「法定控除」
- (B)会社や社員の希望で任意に徴収する「法定外控除」
給与連動型のものは、給与が0円になると控除額も0円となります。無給の休職中は控除が発生しないので特別な考慮は必要ありません。
給与非連動型のものは、給与が0円でも、控除が継続します。給与が0円では控除することができないので、会社で立て替えて本人から別途回収するか、控除停止することになります。
給与非連動型の控除項目のうち、主なものについて無給時の対応方法を説明します。
住民税
住民税は毎月定額の法定控除です。無給期間中も控除が必要なため、会社で立て替えて本人から回収します。ただし、病気で無給となる場合は、普通徴収に切り替えることで会社の徴収義務を逃れることができます。休職期間が長い場合は、選択肢に加えてください。
社会保険料
健康保険料と厚生年金保険料は法定控除です。産前産後休業や育児休業の時には免除されますが、病気休職では免除されません。無給期間中も控除が必要です。会社で立て替えておき、後日本人から回収します。
団体扱い保険料
個人で加入している生損保の保険料を保険会社の代わりに会社が徴収する制度です。法令の強制力はなく任意の法定外控除です。保険料徴収の代行のため、無給になった場合は個人扱いに変更することで引き去り金を0円にできます。無給になる前に保険会社に連絡しておきましょう。
寮・社宅利用料
会社の寮や社宅の利用料です。法令の強制力はありませんが入居している間は毎月必要となります。無給になったらすぐ退去というわけにはいかないので、毎月本人から回収することになります。
財形貯蓄・持株会など
社員の財産形成を支援する積立制度です。法令の強制力はありません。社員が任意に積立額を決めているので無給期間中は積み立てを中断しましょう。
紹介したものは一例ですが、無給期間中も控除が継続されるもの、停止できるものなどさまざまです。それぞれ対処可能な方法を調べ、中断できるものは可能な限り中断し、給与の不足金額が少なくなるようにすることが重要です。
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