高くなるクルマ コスト高は本体価格だけではない:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
この20年、サラリーマンの給料が上がらないといわれているにもかかわらず、クルマの価格は上昇していく一方だ。軽自動車でも200万円が当たり前の時代。クルマを買い替えよう、あるいは新たに購入しようと思った時、感じたことはないだろうか「クルマって高くなったなぁ」と。
40年前の最安値47万円が、いまや126万円
現在販売されている普通車で最も安いのは、ダイハツのブーンで126万5000円から。この価格でも運転支援システムのスマートアシストIIIや、エアコン(ただし調整はマニュアルだ)は標準装備している。しかし内外装の素っ気なさは、個人所有というより、企業の営業車としての利用を想定した仕様なのだろう。
実際に個人が大金を支払って所有するなら、充実した装備と加飾による高級感ある内外装を求めるから、1リットルクラスでも150万円以上の価格帯になり、オプションや諸費用を含めれば総額は200万円に近付く。
しかも燃料価格が上昇している現在では購入価格よりも燃費を重視する傾向も強い。初期投資はかさむものの燃費性能に優れるハイブリッド車が人気で、この傾向はすでに長く続いている。エコカー減税がEV、FCVに絞り込まれるようになってもハイブリッド車が人気なのは、価格と実用性、維持費で比較した場合、最もバランスが取れているからだ。
ただし実際にはヤリスの1リットルモデルとハイブリッドでは、燃費で車両価格の差額を回収するには、相当な距離を走らねばならないから、ほとんどの場合でハイブリッド車は元を取れない。それでもリセールバリューの高さで売却時に差額を回収できることもあるし、何より購入後に燃費の心配が少ないことに価値を見出しているユーザーは多い。
つまりハイブリッド車は燃料価格の上下動に一喜一憂しなくていい、それらのストレスから解放されることにメリットがあるのだ。
クルマに要求される機能、性能のレベルが上昇
クルマの保安基準が国際的に統一化されていくとともに、さまざまな機能や性能のレベルが明文化されたことで、クルマの開発は複雑化していった。ユーザーに直接訴求できる快適性や燃費性能だけでなく、衝突安全性や灯火類、騒音規制などエンジニアが技術的に解決しなければならない項目が増加したのだ。
要求される要素のレベルは高く、開発と生産のコストは当然上昇する。そのため自動車メーカーはどこもプラットフォームをベースとして開発し、ボディバリエーションを展開して、コストを抑えながら魅力的なラインアップを生み出す努力をしているのが現状だ。
さらに最近ではADAS(先進運転支援システム)がコストを上昇させている。ミリ波レーダーや赤外線レーザー、カメラシステムなどのセンサーと、制御のためのECUとアクチュエータを使ったバイワイヤー機構は、スケールメリットで多少安くなったとはいえ、昔は必要なかった類いの装備だ。
そしてハイブリッドなどの電動化も、当然生産コストを押し上げる。EVほどではないにせよ、高性能なバッテリーを搭載するのはコストアップだけでなく、補機の増加によるシステムの複雑化という問題もある。燃費に関しては電動化でむしろ向上するが、衝突安全性を確保するための開発作業が難航するのである。
だが、クルマをもつドライバーが金銭的負担の多さを感じているのは、車両本体が複雑で豪華になり、高価になっているだけではない。
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