高くなるクルマ コスト高は本体価格だけではない:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
この20年、サラリーマンの給料が上がらないといわれているにもかかわらず、クルマの価格は上昇していく一方だ。軽自動車でも200万円が当たり前の時代。クルマを買い替えよう、あるいは新たに購入しようと思った時、感じたことはないだろうか「クルマって高くなったなぁ」と。
クルマにかかる税金の多さにユーザーは辟易
加えて日本でクルマを購入し、維持していくことに掛かる税金の多さには、うんざりするユーザーがほとんどだろう。購入時には、車両本体価格に掛かる消費税だけでなく、さまざまな名目で税金が課せられるのだ。
3月に登録する場合を除き、毎年払う自動車税が月割りでかかるだけではない。車検時にも諸費用に含まれる重量税が登録時には3年分が課せられるが、これはエコカー減税の対象車であれば減税、もしくは免税(EVやFCVの場合)となる。それよりも問題は取得税の方だ。
2019年9月までは車両本体価格の3%(軽自動車は2%)が取得税として課せられていたが、消費税が8%から10%に引き上げられた際にこの取得税は廃止された。その代わりに環境性能割などという税と名が付かない名称で車両価格の3%まで(軽自動車は2%まで)の税額を納めることが定められたのである。
環境性能が優れたクルマは免税、もしくは減税されるものではあるが、これと取得税の違いが分からない。免税になるクルマもあるが、そもそも消費税が引き上げられたことで、従来の取得税に相当する納税はされているのだ。要は言葉を変えただけの課税に過ぎず、ドライバーから搾取(さくしゅ)しようという姿勢は変わっていないのだ。
前述のように燃費性能に優れたハイブリッド車などは、この環境性能割が免税となる。しかし、その分以上に車両価格は高く、購入費用は総額では決して安くはならない。なるべく燃費性能に優れたクルマを購入させようという意図は分かるが、それなら補助金支給でいいハズであり、購入時に消費税以外の税を徴収するのは、結局ドライバーを食い物にしていることに他ならないのだ。
こうした課税の多さ、重さが相変わらずドライバーの大きな負担になっている。それが表面化したのが、燃料税制へのトリガー条項に関する議論だ。そう、クルマは購入時や車検時だけでなく、利用している間ずっと税金を徴収されているのである。
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