高くなるクルマ コスト高は本体価格だけではない:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
この20年、サラリーマンの給料が上がらないといわれているにもかかわらず、クルマの価格は上昇していく一方だ。軽自動車でも200万円が当たり前の時代。クルマを買い替えよう、あるいは新たに購入しようと思った時、感じたことはないだろうか「クルマって高くなったなぁ」と。
ガソリン税の行方はどうなる?
ガソリンにはそれ自体の価格に加えて、通称ガソリン税と呼ばれる揮発油税(厳密には揮発油税と地方揮発油税)と石油石炭税が課せられている。石油石炭税は1リットルあたり2.8円だが、ガソリン税は53.8円にもなっている。このガソリン税は本則税率は28.7円で、残る25.1円は暫定税率として追加されている。
暫定とはいいながらも、定められた1974年からずっと続けられている。しかも当初は道路財源のための目的税だったものが、いつの間にか一般財源化され、クルマのため以外の財源として利用されているのである。
しかし2009年に政権が自民党から民主党へと移ったときに、公約だったガソリン税の撤廃は実現できなかったものの、ガソリン価格が高騰した場合に暫定税率分を免税とするトリガー条項を制定した。
ところが実際にトリガー条項が発動する状況になってくると、今の自民党政権はトリガー条項の発動には否定的な考えを示し、石油元売り会社へ補助金を支給することで燃料価格の上昇を抑え込もうとし始めたのである。
もちろん、この施策に効果がないわけではない。しかし補助金を出しても、小売をするガソリンスタンドは周囲の同業との空気感を図りながら価格を調整することになるから、必ずしもユーザーに還元されるとは限らない。
民主党政権時代に定められた条項であるから抵抗がある、という見方もあるが、実際はトリガー条項を発動させれば巨額の減収になるという恐れが政府にはあるのだろう。
補助金は予算が尽きれば終了となるが、トリガー条項は一度発動されれば、燃料価格が十分に下がらなければ停止できない。そうなると見込んでいた税収は大きく減少してしまうことになる。これが政府が発動を拒否している最大の理由だ。
結局、取りやすいところから取る、という姿勢は変わらない。これもドライバーの負担を重くしている原因だ。そもそもクルマの保有台数が1970年代と比べてほぼ倍もある現在、目的税ではないのに同じ税額、さらに13年以上が経過した車両はざらに増額されるという横暴ぶりは、いかがなものか。
加えて最近は、クルマを販売する現場でもユーザーを悩ませる事態が起こっている。コロナ禍で減産、納期が延びて値引きは少なくなっているというディーラーの現場だ。車種や競合によっては値引きを引き出せるケースもあるが、強気なディーラーの態度が嫌になって中古車を購入することにした、という声もある。
都内のガソリンスタンドは、レギュラーガソリンでも170円を掲げるところが出てきた。わずか2、3年前は120−130円台だったことを考えると高騰ぶりがすさまじい。今後も上下動はあるが、あの頃の価格帯に戻ることはないのではないだろうか。
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